あおみ労務事務所
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労務記録
「会社の粘着力を増すためには社員との共通の思い出をより多く持て」と、明日香出版社の社長・石野誠一氏が、かつての講演会の中で言っていたことを思い出します。
このページでは、労務管理の意義を、「人を生かす」という視点でとらえ、業務で体験した出来事や身近で話題になったことなど、労務管理の記録を発信していきます。
2008.09.20 (Sat)
吉本観劇は中止!

台風一過の久しぶりに良く晴れた日。本当なら、この時間、大阪なんばグランド花月にいるはずなのだが、なぜか「労務記録」を書いている。

事務所の黒板の今日の欄には、「吉本観劇(労務士会 親睦旅行)」と書かれている。しかし、台風が東海地方に接近している木曜日、早々と親睦旅行の中止が決まったのだった。

楽しみにしていた者としてはガッカリだった。家人などは、「花月で見るか、テレビで見るかの違いだけ」と言うが、時間と費用を使って行くのにはそれなりの意味があるのだ。

寄席もそうだが、観劇も現場で見るとまず倍の面白さがある。それは平面と空間の違いみたいなもので、テレビよりも劇場の方が女優の美しさが引き立つのに似ている。

まぁ、少し未練は残るが、おかげで二男、三男の中学校の運動会の見物に行けたし、深夜の飲酒もできたことだし、良しとしなければならない。

そういえば、「人命救助中の労災が認定された」と、水曜日の朝刊に一斉に報じられていた。
「前例に縛られないハートある判決」とも書かれていた。

細かい法律解釈にとらわれない「世間の常識」を重視した判断が、今後益々大切になるだろう。
世間の常識は、存外、吉本観劇など“普通のこと”から磨かれていくのではなかろうか?



2008.09.07 (San)
褒め上手になろう!

昨日、このホームページの「経営情報」の項で、「“暴力”から“褒める”リーダーシップへ」(今風成績向上論)を書いていたときに、日経新聞の夕刊が届いた。

見るともなしに見ると、次の見出し。

   職場の大事な潤滑油・・・  褒め上手になろう

「職場で円滑に仕事をするには、よりよいコミュニケーションが大切。それには褒めること」とあった。「何だ、今書いたこととおなじジャン!やる気を引き出すには、今や褒めることか?」と思った。

   相手を上手に褒める → 褒められたら素直に感謝

が、「褒めサイクル」なのだそうだ。「褒め上手になるには」をまとめると、大体下の感じになる。
参考にしてみて下さい。


 褒め上手になるには(祐川京子編)
●ボキャブラリーを増やす
 ・自分が言われたらうれしい言葉を書き出してみる
 ・ほめ上手な人が使っている言葉を聞いて、活用する
●相手をよく観察する
 ・どんな言葉が喜ばれそうか、相手のこだわりや努力しているポイントを探す
●褒める癖をつける
 ・テレビや映画、本の感想を、褒め言葉を使ってまとめてみる
 ・1日に3人以上褒めるよう心がける
●積極的に感謝の言葉を伝える
 ・上司や取引先などにも、お礼なら言いやすい
 ・世話になった人のことを、第三者に伝える



2008.08.31 (San)
シャコが苦手?

日曜というのに早朝から電話。受け答えする家人の声が、眠りの中で遠く聞こえる。
起きてしばらくすると、家人がビニール袋を提げて帰ってきた。

ビニール袋には一杯のシャコ。そうか、親戚の漁師宅から、シャコをあげるから取りに来るように電話があったのだ。思わず、今宵の酒を想像した。

シャコを肴に「キリン秋味」を!が初秋の定番だ。それにしてもこんなに美味なシャコが苦手だという人がいる。シャコの姿、形がいけないらしい。なるほど、さそりに似てなくもない。

先週、愛知県社会保険労務士会(愛社労) 三河西支部の総務部会があった。議題が手詰まりなので、「会員が支部行事に積極的に参加したくなるにはどうしたらよいか?」を提案した。

このところの参加率の低さには目を覆いたくなる。さすがに研修会はメシの種だけあって参加率は高いものの、会員の結束を高める厚生行事となると10%ほど。

下の意見が出た。

 ●
積極的に参加してもらう目的は何か? 
  → 会の活動を盛り上げ、結果的に自分たちの利益となる為!

 ●研修会は出席率が良いが、懇親会は出席者が少ない。

 ● ベテランの会員で出席しない人は、多分今後も出席しないであろう。
   →新入会員を中心に、積極的に参加してもらうことを考えよう!

 ● 誘いの言葉があると良いのでは?
   →趣味の会や同好会を作ろう!

 ● 時間帯を平日の昼間からずらしてみては?

 ● 支部が何をどうする組織なのか、新入会員にはわからない。

そして、総務部の総意が次のようにまとまった。

 ●新入会員へ参加の声掛けをする。

 ●支部のしおりを作成し、役員が新入会員に説明する。

中華料理屋で行われた二次会。
ここで、「シャコが苦手」という女性会員からの声が出たのだった。




2008.08.16 (Sat)
私を素敵に変える!

「私を素敵に変える資格・特技 全40講座」

何気なく繰った新聞広告に目が留まった。
“私を素敵に変える”というフレーズが、何かワクワクさせる。

「さぁ、今こそあなたが変わるとき。今のあなたは100%本当の自分ですか?
もっと自分らしい素敵な人生を納得いくまで見つめてみませんか」

人生も半分過ぎると、この手の広告には興味を引かれなくなるが、まだまだ自分を捨てたくない気持ちも残っていて、若いときの自分がふと首をもたげてくる。

弁護士、公認会計士といった国家資格は、能力の限界を知ってしまえば興味はついえるが、全40種に載せられた講座は柔かいモノなので、「やってみようかな」という気にさせる。

「ギター弾き語り」「二胡を弾く」「高木ブーの楽しいウクレレ」「オカリナ奏法」といった音楽系ジャンルに特に惹かれるが、才能に関しては“赤紙”を折られているからダメだ。

「観音様を彫る」「漢字の謎」「漢詩・漢文を読む」「遊書制作」も楽しいが、面倒臭さが先行する。
「北見マキのマジック・手品」「折り紙手芸」などは、宴会芸を学ぶ手立てになるが・・・。

どれもこれもイマイチ、その気にならない。仕事持ちでは、受講したところですぐに、「そんなの関係ねぇ」で終わってしまうだろうナ。仕事のスキルを上げるつもりなら、「心理カウンセリング」か?

「ストレス社会に欠かせない心の悩みを解決する技能。職場や家庭、学校での人間関係の悩みもスッキリ解消!自己カウンセリングで自分の心も健康に保てるようになります」

あっ、これだ!「自分の心を健康にする」というフレーズに魅せられた。
それだけ心が健康でないということか?



2008.08.10 (San)
可能性を信じよう

 中一の息子の授業参観がありました。数学の計算で苦労していたので、こっそり教えてやり
 ました。英語でも単語や基本文が覚えられません。試験も最下位ランク。

 「もう少し勉強に興味が持てれば本人も楽しくなるのに」「勉強するのは子どもの仕事」と思い、
 放っておけません。私はうっとうしい親ですか?

 「できなくてもいい」とドーンと構えなければいけませんか?

上は、中日新聞・生活欄に寄せられた「子育て相談」。私も中一の息子がいる身。
どんな回答になるのか興味津々。回答者は、ブックドクター・あきひろさん。

 あのな、お母さん。「勉強するのは子どもの仕事」やあらへん。それに、本来「義務教育」という
 のは、わが子を学校に行かせてあげる義務が親にあるだけや。

 お母さんは、わが子のために母親業をがんばろうという義務を自分に課してみるのはどうやろ?
 具体的に母親業をがんばるにはどうするか。息子に対して、こう思ってあげたらどないやろ。

 「うちの子は、今は数学はできひんし、英語も苦手やけど、きっと将来、なんかやってくれそうな
 気がする」って。そう思い続けられるかどうか、お母さんが自分自身に課してみてくれへんか。

 そうすると、息子さんもお母さんも少しずつやけど、将来を不安がらんでもええやん。息子さんを
 いい目で見られるようになるし。

そうか、「可能性を信じよう」ということなのだ。可能性を信じて、温かい目で見つめていくことだ。「できの悪い子ほどかわいい」というが、心配の数だけ、母子の心が通っていくのも事実だろう。

子との関係は、すなわち社員との関係。

「社員の可能性を信じよう」を合言葉に!



2008.07.27 (San)
田草をとる

猛暑が続いている。暑いと言ってはビールを飲み、ビールを飲めば益々暑くなる。
「言うまいと思えど今日の暑さかな」。昔の人はうまいことを言ったものだ。

遠くで雷の音がする。熱した空気が上空で擦れあって、静電気を起こすように火花が散る。
それが雷なのだが、この暑さ、一雨が期待される。

月間社会保険労務士7月号を読んでいる。連合会の大槻会長が、「一寸先は闇」という言葉を引き合いに、我々社労士の置かれる立場の危うさを危惧している。

ちょうど一年前、「年金加入記録漏れ問題」が発生してから、社会保険庁解体を視野に政治・行政が動き出した。政府管掌の健康保険が、この10月から全国健康保険協会という新たな組織へ。

そして、平成22年1月から公的年金が日本年金機構へ移管される。国民に対する利便性・サービスの低下は許されないと、「街角の社会保険支援センター」を立ち上げる構想だ。

しかし、手続き等はどうなるかまだ明確に決められていないようで、場合によっては社労士の死活問題に発展するのかもしれない。

 「この秋は、雨か嵐か知らねども 今日のつとめの 田草とるなり」(二宮尊徳)

将来の変化を変に憂えることなく、地に足をつけて今を精一杯進めという意味なのだろう。
環境の変化をチャンスと捉えるか、ピンチと捉えるかはその人の気持ちしだいである。

下に、尊徳翁の教えをまとめてみた。

 ●至誠   まごころ。「至誠」が尊徳翁の教えのすべての土台になっている。

 ●勤労   人間にとって働くことは大切。熱心に働けば、人間は生きていくために必要な
         ものをいくらでも手に入れることができるが、逆に働かなければ食事さえまとも
         に取ることはできなくなる。働くことによって人は向上することができる。

 ●分度   自分の置かれた状況や立場をわきまえ、それぞれにふさわしい生活をすること。
         収入に応じた一定の基準(分度)を決めて、その範囲内で生活すること。

 ●推譲    将来に向けて、生活の中であまったお金を家族や子孫のためにためておいたり
         (自譲)、また、他人や社会のために譲る(他譲)こと。

社員一人ひとりがこの教えを胸に仕事ができればいいのだが・・・。



2008.07.06 (San)
古酒・金丸

先週、K社から「金丸」(かなまる)という沖縄の古酒(泡盛)を頂いた。沖縄出身の社長だから、故郷から取り寄せたのだろう。私の酒好きを知っての、K社の粋な計らいに思わず脱帽。

「金丸」というと、かつての副総理・金丸信を思い出すが、「金竹小」(こんちくしょう・金丸信、竹下登、小沢一郎を指す)の時代、一時的に権勢を誇ったものの、最後は囚われの身となった。

しかし、こちら古酒の方の「金丸」は、数ある甕(カメ)の中でも、最高の甕で10年熟成された銘酒だそうで、蔵元・伊是名(いぜな)酒造所の最高傑作だそうだ

15世紀の琉球王、尚円王の幼名が金丸で、生まれた島が伊是名島。人徳が高く、民に敬愛された王・尚円王への敬意を表し、人々に喜ばれる酒にという願いを込めて命名されたようだ。

物の本を読むと、「金丸」は、「高貴な香りと、口に含めばまろやかな味のふくらみ。飲んだ者だけが納得できる旨さ」と書かれている。飲むのが楽しみだ。

桐の箱に入った一升瓶はまだ、我が家の仏壇にお供えしてあるが、算定基礎業務が一段落したところで封を切ってみようと思っている。

どんな味がするか?楽しみを後に取っておくのも悪くない!



2008.06.29 (San)
さて、次に控えしは・・・弐

梅雨の六月も終わりを告げようとしている。
パラパラと手帳を繰ると、この月にこなした行事が雫のようにこぼれ落ちる。

  3日  社労士会 三河西支部 実務研修会(刈谷産業振興センター) 

  9日  特定社労士懇親会(金山・手羽先の山ちゃん)

 11日  労働保険臨戸説明会(刈谷労基署)
       中小企業家同友会 事前打合会(江戸みこし)

 12日       〃       グループ会(碧南市役所)

 14日  高浜文協 川柳 月例会(高浜中央公民館)

 17日  シルバー人材センター講習会打合会(社労士会館)
       中小企業家同友会 碧南高浜地区 広報委員会(居酒屋酒楽久)

 20日  社労士会 三河西支部例会(兼 算定基礎説明会)

 21日  年金特別アドバイザー(刈谷社会保険事務所)

 23日  理事会(社労士会館)

 25日  中小企業家同友会 碧南高浜地区例会(碧南市役所)

 26日  経営指針勉強会(ダスキンクリーン商事)

 29日  會田規世児氏 県文化功労賞受賞を祝う会(岡崎・竜美丘会館)

臨戸説明会は担当責任者、三河西支部例会は司会、碧南高浜地区例会はパネルディスカッションのコーディネーター、経営指針勉強会は発表者と、忙しい日々を過ごさせてもらった。

その中で日常の実務もこなしていかねばならず、骨は折れるが、充実した日々だ。
先日、経営指針勉強会での仲間に、「何が一番困っているか」を問われた。

「人材の採用」と答えたものの、人の雇用は逡巡するばかりだ。果たしてこの性格で人が使えるか、女房もまともに使えない男が、他人様など使えるか?と悩む毎日・・・・。

事務所の経営指針では、「人間力を高める」ことに重点を置いているが、「人間力を高めるには、人を採用するのが一番」と、これまた仲間に言われる始末。

この夏は、採用を真剣に考えなくてはいけない季節。
次に控えしものが次から次へやってくる・・・・!



2008.06.21 (Sat)
さて、次に控えしは・・・

労働保険の年更業務がようやく終了した・・・・。
と書くと、読者の方はいぶかしげに思われるだろうが、つまりこういうことだ。

ご案内のとおり、年更期間は年度の初めから50日間だから、4月1日から5月20日までを指すのだが、それだけでは済まないのが社労士の世界。

単に、期間内に労働保険料の確定・概算の申告をするだけではなく、その後の官署協力も含めて携わるのだから大変だ。今年度の日程は、次のとおりだった。

 ○ 4月10日(木)  第1回目年更打合せ会(留意点の確認と集合受付協力会員の割り当て)   

 ○ 5月20日(火)  集合受付(刈谷署、金融機関での申告書受付業務)

 ○ 6月11日(水)  第2回目年更打合せ会(年更業務の実施状況と臨戸収集割り当て)

 ○ 6月12日(木)〜6月20日(金)  臨戸収集

「臨戸収集」とは、一般の人には馴染みのない言葉だが、要は、労基署の督促にも拘わらず、労働保険料の申告がまだなされていない事業場に対して、戸別に訪問することを指す。

時には、賃金台帳をお借りして、こちらで申告書を作成することもあり、中々骨の折れる仕事だ。“督促”を受けても提出しない剛の者は一筋縄でいかない場合が多い。

その年更業務がようやく終了した。世間ではすでに、社会保険の算定基礎業務が始まっている。遅ればせながら、「算定基礎」に取り掛かることになるが、幸か不幸か、息を抜く暇がない!



2008.06.15 (San)
相棒ジョリー

中日サンデー版(中日新聞)が面白い。そこには、“文化”が横溢していて、いわゆる文人には、噺家のくすぐりが客にはまったときのような、たまらない悦楽?がある。

「中日歌壇」「中日俳壇」「クロスワードパズル」「文字クイズ」「絵手紙」「300文字小説」「名作を食べる」「奥の横道」「元気くん」・・・・どこを切り取っても、たまらない悦楽(?)。

今日の300文字小説には、こんな短編(すべて短編だが)・・・。感心した。即、これは労務管理に使えると思った。どの場面が、どの発想が使えるのか、各自で考えてください。

それでは作品を発表します。


  相棒ジョリー              高見あずさ

私のバイト先は、新入りが掃除機がけをすることになっている。

広い店内の隅々まで掃除機をかけるのは大変で、汗だくになる。一番下っ端だった私も、汗とホコリにまみれながら毎日やっていた。

でも辛くて、腰が痛くて、嫌で嫌で・・・。

ある時、私は気づいた。

きっと、嫌だと思うから、よけい辛くなるんだ。もっと愛情を持って接してみよう!

そういうわけで、私は、掃除機に「ジョリー」という名前を付けてやった。

相棒となったジョリーとともに、私は、日々戦った。中古の割に吸引力が強く、頑丈なジョリー。私達の信頼関係は、だんだん深まっていった。

それから二週間後、新人さんが入社した。相棒ジョリーとの悲しい別れだった。



2008.06.07 (Sat)
非正規社員

金曜日、K社の常務からメールが届いた。

要約すると、K社の雇用形態にはまとまりがなく、給与、賞与、社会保険、年次有給休暇などが適当に処理されていて、正規社員と非正規社員とをどう区別すればいいかで悩んでいる様子。

せっかくだから、今週は、「非正規社員の特徴」についてまとめてみたい。

出向社員 他企業より出向契約に基づき出向している者
出向元に籍を置いているかどうかは問わない。
派遣労働者 「労働者派遣法」に基づく派遣元事業主から派遣された者
パートタイマー 正社員より1日の所定労働時間が短いか、1週の所定労働日数が少ない者  雇用期間の定めの有無は問わない。
臨時・日雇  臨時的にまたは日々雇用している者で、正社員と1日の所定労働時間および1週間の所定労働日数が同一の者
契約・登録社員 専門的職種に従事させることを目的に、契約・登録に基づき雇用している者
その他 上記以外の労働者

さて、こうした非正規社員は正規社員とどこに違いがあるのか?その前に正規社員とは何か?を見てみよう。

正規社員 新規学卒者やそれに準じた中途採用者であって、雇用期間の定めがなく、特段の事情がなければ定年までの雇用が予定されている者

この定義に従えば、定年までの雇用保障を前提とする社員を正規社員といい、そのような雇用保障のない景気変動や業務量や業務内容の変更等に応じて雇用が終了することを前提にした雇用者を非正規社員という。

それゆえ、非正規社員は、原則として雇用期間を定め、企業が不振となり余剰人員となったような場合においても、他に配転、出向といった人事上の手段を通じて最終まで雇用を保護しなければならない社員ではなく、むしろ正社員のギリギリまでの雇用保障を貫く必要上、それ以前の段階で雇用調整のために解雇することを前提とする雇用者なのである。

            (参考文献 安西愈「非正規社員の増加と雇用形態の多様化をめぐる問題」)



2008.06.01 (San)
社労士の心棒

昨日、月末締めの請求書を別納郵便で発送しようと、隣町の郵便局へ。
土曜定休ということで、一つしかない臨時窓口には長蛇の列。

私の前には、刈谷市内にある大手自動車部品メーカー・採用課宛の封書を携えた中年女性。
窓口の年配女性と、何やら宛名書きのことで話している様子。

「“採用課様 行き”と宛名書きされてますが、“採用課 御中”と書かれた方がいいですよ」

「裏に送り主の名前が書いてありませんが、手紙の様式を知らない人と思われますよ」

受付の年配女性は、心配な様子で、言葉を選びながらやさしく語りかけていた。感心した。なるほど、リクルートの郵便は、応募者の知識や人となりを人知れず反映させてしまうのだろう。

窓口業務は、客の封書を受け取るだけで事足りるが、こうした世話も、郵便事業に関わる者の使命かも知れない。手紙の書き方を伝えたいという一途さも大切なことなのだろう。

結局、中年女性は娘から預かったという採用課宛の封書を持ち帰ったが、帰り際、「ありがとう」という言葉を残していった。親身な助言を心底理解できたのだろう。

さて、社労士の仕事にも親身さが大切になる。時に大きなお世話であったり、要らぬことだと相手が思っても、譲ることのできない心棒が仕事の中に宿っていなくてはいけないのだ。

六月。心棒を小脇に抱え、この夏を邁進していこう!



2008.05.18 (San)
五月病

五月も半ばが過ぎた。新入社員たちは五月病とやらに罹っていないだろうか?環境の変化に対応することが下手な若者はどこにでもいるはずで、五月病は一種のうつ病なのだろうか?

五月病は、就職した若者よりも大学に進学した学生の方が多いような気がする。就職した若者は、自分に与えられた仕事に慣れるのに精一杯で、五月病どころではないはずだ。

一方、学生はというと、辛い受験生としての日々を乗り越え、大学に合格した面々。張り詰めていた糸が緩んで無気力状態になるというのは、往々にしてあることではないか?

しかし、志望校合格という目標から、次の目標を探しあぐねて佇むことは決して悪いことではない。一度自分自身を無にしてみるのも、長い旅の中では必要なことだろう。

年更業務(労働保険の確定保険料・概算保険料の申告業務)がようやく終わった。年更期間中に、後期高齢者(長寿)医療制度への切り替え業務もあって、骨の折れる時期だった。

通常はここらで一服、五月病に罹って一休みといきたいが、年金相談が降ってわいたようにやってきて、手足を縛られる。とてもとても五月病に罹らせてもらえる雰囲気ではない。

併せて、就業規則作成や「特定健康診査」申込みの依頼が殺到。この4月から健診等の仕組みが大きく変わったため、その周知徹底にも時間を割かれる。

最近とみに多いのが、「健康保険限度額適用認定申請書」(*)の作成依頼。

 (*)従前、70歳未満の方が病院で支払った医療費は、高額医療費を自己申請することで、
    自己負担限度額を超えた分が払い戻されていた。しかし、平成19年4月からは、限度
    額適用認定証の交付を受け病院に提示することにより、入院時の窓口負担が自己限度
    額までの支払いで済み、一時的な費用負担を軽することができるようになった。

まあ、五月病に罹るのは、社労士にとって引退した暁なのだろうが、それが幸せなことなのかどうか?時折の“うつ”も捨てたものではないと思うが、どうだろう?

  青空のどこかに潜む五月病         比呂志



2008.05.03 (Sat)
五島列島からの手紙

長崎県・五島列島から「五島手延うどん」が届いた。三度目だ。
九州本土の遥か西方海上に浮かぶ島からの品だけに、時空を超えてきたような感じだ。

送り主は、一昨年末に西三河地方の会社を辞めて、五島列島に帰郷したTさん。
帰郷から早や一年数ヶ月が流れている。

Tさんは、在職中に糖尿病を患い、退職までの数ヶ月インスリン治療を行っていた。強い倦怠感を覚え、仕事が手につかない様子だった。そこで治療に専念するようアドバイス。

健康保険の傷病手当金でかろうじて生計を立てていたが、故郷に妻子を残しての独り身は、病気持ちのTさんには辛く、それで泣く泣く帰郷したというわけだ。

先月、その傷病手当金の給付が終了した。支給開始から一年半が過ぎたのである。うどんを送ってくれたのは、傷病手当金請求の窓口だった私をねぎらっての行為だったのだろう。

さて、「五島手延うどん」。きし麺のように細い麺と、あごだしつゆが入っている。あごとは飛魚。焼き干した飛魚のダシは、細い滑らかな麺と相性がいい。

初めは、飛魚の独特の癖が気になるが、慣れるとその癖が病みつきになる。芋焼酎しかり、バーボンしかりで、癖がいつしか魅力になるのだ。人間もそうか?

「五島手延うどん」の発祥については、遣唐使船の往復によって中国から伝えられたとの説が有力。ということは、すでに千年を超えた年月が今日までに刻まれている。

なるほど、時空を超えてきたように感じられたのは、そのためである!



2008.04.27 (San)
後期高齢者医療制度

今月1日から始まった「後期高齢者医療制度」が、何かと世間を騒がせている。名前が良くないという指摘もあり、福田総理の肝煎りで、通称名を「“長寿”医療制度」としたようである。

どのパンフレットの説明文を見てもイマイチ目的がはっきりしないが、高齢者の医療費を安定的に支えるための財源確保が制度の眼目なのだろう。

そうであれば、高齢者にとっての負担は当然増えることになり、「年寄りは早く死ねということか」「姥捨山」なる言葉も真実味を帯びて、この先、老人一揆が起こるかもしれない。

今日の中日新聞・時事川柳も、5句のうち2句までが「後期高齢者医療制度」を詠んでいる。

 保険料老いの脛までかじり出す        今田久帆

 長生きも後期といわれもの悲し         小島悠

そして、ページを捲ると、「後期高齢者」という言葉に反発する文面。
「くらしの作文」(宮地滋子)では次のような文章に出くわす。

 いっそ、74歳以下を「シルバー」、75歳以上を「ゴールド」としたら・・・。
 「ゴールド高齢者」という夢のある名前になったら、余生は心豊かに暮らせるのでは。

「子猫を抱えて」(小倉千加子)では、「満期高齢者」の提案がされている。

 老人は年齢とともに経験も理性も智慧も利子のように増えていく。定期預金のように年齢に
 満期がくると、その定期をまた喜んで継続するというように、「満期高齢者」には終わりがない。

それぞれの思いがそれぞれの命名をするが、「もみじ」も捨てたものではない。自動車のもみじマークを想像するが、出所は良寛禅師の辞世の句。

 うらを見せおもてを見せて散るもみぢ           良寛



2008.04.19 (Sat)
鯛釣草

木曜日、得意先の事務所でかわいらしい花を見つけた。花瓶に活けられた風情が四月の風のように清々しくて、鈴蘭を思わせるような花だった。

「今朝、自宅の庭で切った」と言う事務員さんが、「たいつり草」と教えてくれた。鯛釣草と書くのか、なるほど小花が、まるで釣竿で鯛を釣り上げたように見える。別名は、「ケマンソウ」。


鯛釣草

事業所を訪れる喜びのひとつは、知らない花に出会えることだ。いつも花が活けられている会社は業績もいいように思う。社員のやる気や規律と花との因果関係があるのかもしれない。

最近、始業前に社員が清掃をしている会社が話題になるが、清掃が永続的になされている会社は決まって好業績を残している。職場をきれいにすることで、気持ちよく仕事ができるのだろう。

それは、花にも共通することで、きれいな花々を見て、怒る人はいない。花を見て気持ちが穏やかになったり、和んだりすることが、仕事の奥行きを広げていくのだろうか?

労働保険の年更業務真っ盛り。美しい花々を見つめることで乗り切っていこう!



2008.04.13 (San)
人生の悲哀を感じながら・・・

労働保険の年更業務が始まった。社労士にとっては一番忙しい季節。時を同じくして後期高齢者(長寿)医療制度が始まり、その手続き業務も量をこなさねばならず、容易ではない。

加えて、昨夏から何かと話題の年金の記録不備問題。社会保険事務所から年金アドバイザーを委嘱され、月に何日かは手足を縛られる。社労士にとっては受難の時代なのだ。

その合間を縫って、川柳の会にも出席。昨日は、「高浜文協川柳会」の月例句会。
そして今日は、「桜まつり協賛 春の市民川柳大会」(岡崎川柳社主宰)。

社労士業務の傍ら川柳をやっているのか、川柳の傍ら社労士業務をこなしているのか判らない状態。「二兎を追うものは一途も追えず」とはよくいったもので、本末転倒の様相を帯びてきた。

ということで、今日の川柳大会は散々な結果。事前投句を含めた八句の内、入選はたったの一句。過去最低の出来に、思わず知らず、笑ってしまった。

  貧しさもあまりの果ては笑い合い             雉二郎

文豪・吉川英治の川柳作家の頃の作品だが、人生のおかしみと悲哀を余すことなく物語っている。社労士業務は、人に関わる仕事。川柳同様、人への思いやりを軸に、業務を持続させたい!

さて、今日の入選作。あまりうまくない!

  離職票みんなさびしい列に付く             (兼題「列」)             



2008.04.06 (San)
十戒

土曜日、訪問したお客様企業の事務所の壁に「十戒」と書かれた額が飾られていた。
土曜日は、休日の会社が多い分ゆったりできるので、早速、「十戒」を写させてもらった。


中々良い言葉の数々。心を込めて読む人、批判する人まちまちだが、経営者の思いが少しずつでも伝われば、後世の旅人の道しるべになっていくはずだ。

そんな気持ちで写した「十戒」。
経営者は、自分の気持ちを自分の言葉で表すのも大切なことなのだ。

【十戒】

@仕事は自ら創りだすもので、与えられるものではない。

A仕事は先手先手と働き掛けていくもので、受身でやるものではない。

B大きい仕事に取り組め!小さい仕事は己を小さくする。

C難しい仕事に取り組め!それを成し遂げることに進歩がある。

D取り組んだら離すな!目的完遂するまでは。

E周囲を引きずり廻せ!引きずるのが引きずられるより永い間に転地の差ができる。

F計画を持て!長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫とそして正しい努力と希望が生まれる。

G自信を持て!自信がないから君の仕事に迫力と粘りがない。

H頭は常に全回転、八方に気を配って一部の隙もあってはならぬ。サービスとはそういうものだ。

I摩擦を恐れるな!摩擦は進歩の母。積極の肥やしだ。でないと君の卑屈未練になる。



2008.03.30 (San)
長寿と仕事の関係

米大リーグ・パイレーツとマイナー契約を結んでいた桑田真澄投手が現役引退を表明した。メジャーで投げるチャンスを閉ざされての引退は切ないが「燃え尽きることができた」はいいコメント。

「野球の神様が“ご苦労さん”と背中を押してくれた」
桑田投手の隣には、いつも「野球の神様」がいて、やさしく見つめていたのだろうか?

ジャイアンツの現役時分、マウンドでしきりに独り言をつぶやいている姿を目にしたが、「野球の神様」と人知れず話をしていたのかもしれない。

今月初め、「長寿と仕事の関係」が米国専門誌に報告された。
報告内容は、退職年齢が早い人のほうが死亡率も高くなる傾向にある、ということだった。

研究対象は、ギリシャ人の男女約1万7千人。1994−1999年の時点で、退職しているか仕事をしているかを尋ね、その後平均7.7年間追跡調査を行い、生死や死因を確認。

すると、調査開始時点ですでに引退していたグループは、仕事を続けていたグループと比べて、同年齢でも死亡率が1.51倍と高かった。別の研究もある。

米石油大手シェルの社員を調査したところ、55歳で早期退職した集団は、65歳で定年退職した集団より、死亡率が1.37倍高かったというのである。

これら調査は、「退職に伴って生じる生活の大きな変化が、体や心の健康にさまざまな影響を及ぼし、生を蝕んでいく」という答えを導き出すが、「世に必要とされる」という観点も大きいだろう。

早期にリタイヤすれば、世に必要とされる度合いが低くなり、自分の価値を見失っていくのではないか?「世に必要とされる」ことが、生き甲斐を、意欲を形作っていくのかも知れない。

さて、プロ野球選手が現役を去るとはどんなものなのか?不惑前の若い身空では、悠々自適とはいくまいが、今後も夢を与える存在であって欲しい。

「晴耕雨読」ならぬ、「晴投雨読」は、どんな形に変わるのだろう?



2008.03.16 (San)
浜野矩随

落語協会二つ目・林家たけ平さんの落語
「浜野矩随(はまの のりゆき)」を聞いた。「浜野矩随」といえば、三遊亭円楽さんの十八番だが、たけ平さんもよくぞこの人情噺に取り組んだ。

筋立てからして、おそらく円楽さんに習ったのだろう。スケールの大きさや迫力はとても及ばないが、二つ目噺家としては、まずまずの出来。今後の活躍が期待できる。

さて、噺は、腰元彫り(彫金)の名人を父にもつ矩随が、艱難辛苦しながら開眼していく様が描かれる。あらすじは、「根多データベース」(
http://www.edo.net/goinkyo/main.html)を拝借。


何かにつけて亡父と比較され、腐りきってしまい技術は伸び悩み。それでも、先代に大恩のある芝神明の骨董屋・若狭屋は、矩随親子を見守り、矩随の彫ってくる物を黙って買い取っていた。

ある日、矩随の彫ってきた馬は、足を一本彫り損ない、三本足だった。若狭屋は、失敗そのものよりも、それに気づかずに馬を持ち込んだ矩随の了見をなじり、”死んでしまえ。”と、一喝する。

技量の拙さを自覚する矩随は、若狭屋の言う事も もっともだと感じ、死を覚悟する。
母親にそれを察知され、たった一人の母の形見にと観音像を彫ることになる。

水垢離をし、不眠不休で彫り続ける矩随と、それを見守るように読経を続ける母。
母親への形見の観音像はこの世のものとは思えない、素晴らしい出来映え。

この観音像で若狭屋にやっと認められることになるが、その時、母は自宅で自刃。
最愛の母を失い、矩随は一念発起し先代を超える名人になり、若狭屋にも恩を返す・・・・。


「浜野矩随」は史実に基づいた噺とされ、そこに落語ならではの手が加えられているが、「下手だ、下手だ」と言われ続けた彫金師が、一夜のうちに開眼し、名工としての道を歩む。

そこに若者が持つ特性があるように思う。どうしようもない社員が、何かのきっかけで優秀な社員へと変貌することがあるのだろう。その可能性について誰も否定できないのだ。

樹研工業(豊橋市)・松浦元男社長が言っていた言葉が思い出される。「当社の採用は、先着順。その人の良さを、面接で軽々図ることはできない。十数年経って芽の出てくる者もいる」

一夜の開眼は、落語や芝居の世界のもので、そうそうあるものではないが、“薄皮をはぐように”というのはよくあることだ。そのための不断の努力が労使ともに大切なのだろう。

開眼のための「仕掛けづくり」を経営者は怠ってはならないのである!



2008.03.02 (San)
労働紛争解決話

「2月逃げ月、3月去る月、別れ月」という言葉どおり、2月は忽然と過ぎた。なすべきことは山ほどあったが、山の中に割って入るものも多くあって、一向に山は小さくならない。

刈谷労働基準協会から、会報原稿を依頼された。来年度4月から1年間、「労働紛争解決話」のタイトルの元で、社労士が労使紛争で解決した事例を掲載して欲しいというものだ。

無論、1人で担当するわけではなく、社労士の輪番という形をとるわけだが、1年間の割り振りが原稿執筆以上に大変な作業。責任者ということもあって、何とか12名を揃えたのだった。

さて、「労働紛争解決話」第1夜(4月号)の原稿(下)が出来上がった。これでいいものやら不安は隠せないが、次号を期待しつつ読んでみてください!



 『社長の仕事は社員の不安・不満を取り除くこと』

開業して数年目、ようやく事務所経営も軌道に乗り、日々の業務に奔走しながらも、専門分野の開拓を目指していたある日、顧問先企業の社長から慌しい電話。

聞くと、「社員と有給休暇の件で揉めている。仲裁して欲しい」という内容。
電話では詳細は聞かず、約束した時間に訪問。

当時、社員は20人足らず、家族的な雰囲気が漂う中、徐々に組織化を進めている会社だった。労使双方の主張を聞くと、おおよそ次のように整理できた。

【社員の主張】 私用のため有給休暇を申請したが、有給休暇の残日数はないと拒否された。労働基準法の付与日数からすると、まだ残っているはずだ。

【社長の主張】 当社の就業規則で与えている有給休暇はすでに消化しているので、その日は欠勤したものとして扱う。

社員からすると、もらえるはずの年次有給休暇がまだ残っているにもかかわらず、もらえないのは納得できない、労基法違反ではないかというもの。

一方、社長の言い分は、就業規則で定めている有給休暇の付与日数分はすでに消化しているから、これ以上与える必要はないということ。

労使双方、かなり感情がエスカレートし、下手なことを言おうものなら発火しそうな雰囲気。法令に照らせば、どちらの言い分が正しいか火を見るよりも明らかだか、単に法律論で片付けるのは安易な方法だと思った。

当時、度重なる労基法の改正で、年次有給休暇の初年度付与日数は、6日から8日、さらに10日に引き上げられ、また最初の付与時期が1年から6ヶ月に短縮されていた。

会社にとっては、40時間労働制への移行に加えて、年次有給休暇の日数引き上げで、労務費率が上昇し、経営に大きな負担となっていた。しかも、バブル経済がはじけ、不景気風が吹き荒れる中である。

事業主にとっては、有給休暇を頻繁に使う者は、目に余る存在だったに違いない。労働省(当時)に対する恨み(逆恨みであることを理解しつつも)を覚えて、事業場の就業規則の正当性を訴えたのかもしれない。その気持ちはよく理解できるが、法は法である。

双方の言い分を聞いてから、一旦社員には職場に戻ってもらい、社長には、この問題の本質である労基法第92条の内容を伝えた。

労基法第92条(法令及び労働協約との関係)
@就業規則は、法令又は事業場において適用される労働協約に反してはならない。
A行政官庁は、法令又は労働協約に牴触する就業規則の変更を命ずることができる。

労基法を下回る年次有給休暇を就業規則で規定しても、その部分は無効となり、事業主は、労基法どおりの年次有給休暇を与えねばならないこと。さらに、労基法で定める労働条件は最低の基準なので、それを下回ってはいけないこと等々。

その際、労務管理の勘所を押さえる意味で、こんな話をした。

「労働条件で社員さんが社長に言ってくることには2つあります。ひとつは“要求”、もうひとつは“要望”。要求は、法律を背景にしています。法律どおりの労働条件を求めて社員さんが主張するわけです。

例えば、現在、愛知県の最低賃金は、640円(当時)です。640円を下回る時給で働いているパートさんが640円の時給を求めるのは要求です。払わなければいけません。

それに対して、要望には法的な根拠はありませんので、パートさんが時給700円を求めても、最低賃金を満たしているのであれば、雇入れ時に取り決めした金額しか払いませんと、拒否することができます。

今回、社員さんが法定どおりの有給休暇を求めるのは要求ですので、就業規則と違っていたとしても与えてください。そして就業規則の方を直しましょう」

その日、就業規則を借りて点検すると、法令に違反する箇所があったり、逆に法的な根拠のない部分を手厚く保護したりと、ちぐはぐな印象を否めなかった。その中で、慶弔休暇の賃金の取り扱いを、有給としていた点を拾い上げ、社長に提案。

「有給休暇は法定どおり与えることにしましょう、これは要求の部分ですから。しかし、慶弔休暇を有給にするのは法的根拠がありませんから、社員さんの同意を得た上で、今後は無給とする方向で検討しましょう。慶弔休暇を取った日に労基法第39条の年次有給休暇を使用するのは構いませんが」

元々、会社では慶弔休暇を有給と定めていながら、実際は年次有給休暇として処理されていた。その件を詫び、現状の労務比率の上昇を正直に説明した。

社員の方々も理解してくれ、慶弔休暇日を無給にすること、そして昨年分からの年次有給休暇を法定どおり与えることで決着した。

今思うと、社員にとっては不利な提案だったが、理解を示してくれたのはそれまでの会社の労務管理にさほど不満がなかったからだろう。労使紛争は、それまで蓄積されていた社員の不満にあるきっかけが引火して暴発するもののようである。

あれから十数年の歳月が流れ、会社も50人ほどの規模になった。有能な後継者が育ち、永続的に収益の出せる企業体質となってきた。早い時期に、無給とした慶弔休暇を有給にするよう提案するつもりでいる。

当時からするとコンプライアンス(法令順守)が声高に言われるようになり、法令順守が企業の生命線を握るまでになった。労基法違反は、企業にとって命とりになる時代である。

昨年、岐阜県内の経営者に会う機会を得た。名物オーナーとして著名なその方に、社長の仕事について教えてもらった。「社長の仕事は、社員の不安、不満をなくしていくこと。そうすると、会社は薄皮を剥ぐように良くなっていく」と話された。

社員の不安、不満をなくすために、一層の提案に努めなければいけないことを痛感したのである。



2008.02.23 (Sat)
南極越冬隊の求人

 求む男子、至難の旅。わずかな報酬。酷寒。暗黒の長い日々、生還の保証なし。
 成功の暁には名誉と賞賛を得る。


これは、第一次世界大戦前、英紙に掲載された南極探検隊員募集の広告。
第一次大戦は、1914年7月勃発だから、さかのぼることほぼ1世紀。

現代のように甘美な時代ではなかった。この求人広告を見て、応募した人がいるところをみると、金銭よりも名誉や賞賛に重きを置いた人がいかに多かったかがわかる。

個人の欲得を捨てて、公のためにゆるぎない志を燃やしていた。そんな時代が、わずか1世紀の間に大きく変貌を遂げた。越冬隊員にとって、ニート、フリーターの社会現象はどう目に映るのか?

しかし、南極越冬隊員の募集広告、現在では受理されないだろう。まず、男子だけの求人は、男女雇用機会均等法に違反。わずかな報酬は、最低賃金法に抵触か?

加えて、「酷寒」「暗黒の長い日々」は、劣悪な環境化に身を置くことになるから、安全衛生法違反となるし、「生還の保証なし」に至っては、保険加入が義務付けられるだろう。

要するに、現代ではありえない求人募集なのである。昨年10月から、雇用対策法によって、労働者の募集・採用時に年齢制限を設けることができなくなった。

「働く意欲、能力重視で企業力UP!!」がうたい文句で、意欲・能力を年齢で制限すべきではないというものだ。それはそれで正しいだろう。若年者だけが労働力ではないのだから。

それにしても、南極探検隊員募集の広告、若者に見てもらいたい。こんな劣悪な環境下、名誉と賞賛を得るために、遥か南方へ旅立った若者たちがいることを。

しかし、歴史は繰り返す。近未来、こうした募集広告が再び新聞紙面に掲載されることを誰も否定はできないのだ!



2008.02.16 (Sat)
自宅でも労災?

毎週土曜日、NHKで放映されている「バラエティー生活笑百科」。暮らしの中のトラブルを笑いの中で解決するという番組だが、「四角い仁鶴が丸く納めます」のキャッチフレーズがいい。

今日のテーマは、
「自宅でも労災?」。質問内容はざっとこんな感じ。

会社の許可を得て週に2日は自宅勤務をしている。
先日、自宅勤務の休憩中にコーヒーでもいれようと思い、お湯を沸かしていたのだが、ヤカンを持ち上げたときに手が滑り、お湯が手にかかって火傷をしてしまった。
自宅勤務中の怪我なのだが、労災を認めてもらえるか?


さて、労災が認められるでしょうか?答えは・・・・。
その前におさらい。業務災害として認定されるのは

@業務遂行性
A業務起因性

の二つの条件を備えていなければならない。
いずれか一方の条件が欠ける場合は業務災害とは認められない。

「業務遂行性」とは、「事業主の支配下にあること」。
就業中はもちろん、出張中、休憩時間中も事業主の支配下にあると認められている。

「業務起因性」とは、「事業主の支配下にあったことと傷病との因果関係があること」。
災害が、業務に通常付随する場合や会社施設の欠陥などに原因がある場合に認められる。

さて、設問の場合どうか?

自宅勤務を会社が許可しているのだから、休憩中といえど、事業主の支配下にあるといってよく、「業務遂行性」は問題ないとして、果たして、「業務起因性」はあるのか?

コーヒーを入れる行為は、業務に通常付随するものではなく、会社の施設の欠陥でもないから、この場合、「業務起因性」は認められない。

従って、労災は認められない!が正解。しかし、業務中に誤ってコーヒーを零し火傷した場合は、労災になると考えられるから、労災認定は紙一重のところがある!



2008.02.02 (Sat)
管理者の残業代待ったなし!

管理者の「残業代未払い」問題が待ったなしになった。「偽装管理者」なる言葉まで飛び出し、経営者受難の時代は加速をつけて広がっている。言わずと知れた「マクドナルド」訴訟である。

訴訟の争点は、マクドナルドの店長が、経営者と同等の立場であり、労働基準法上で残業代を支払わなくてよいとされる「管理監督者」に当たるかどうか。

これに対し東京地裁は、裁量権や待遇の面から見ても店長は管理監督者には当たらないと判断、店長=非管理職として、一般社員と同様に残業代を受け取る権利があることを認めた。

そもそも労働基準法でいう「管理監督者」とは、次の要件を満たさなければならない。

@労務を管理する立場にある
A経営者と同じような立場で判断できる
B勤務時間や休暇などの規定にしばられない
C一般社員と比べて賃金面で充分に優遇されている

これら要件に照らしてみると、例えば「部下がいない課長」というのはとても管理監督者とはいえない。仕事で人事権や裁量権を持っていて、いわゆる経営判断ができる人が、管理監督者なのだ。

全く発言権もなく、ただ上の指示に従って、ただ仕事をこなすだけの人というのは、管理監督者とはいえない。訴訟を起こす自体、「経営者と一体」と考えるには無理があると言えるだろう。

また、労働時間や休憩や休日の規定が適用されない。つまり、いつ休みを取るとか、出勤時間をどうするかとか規定されていないのも特徴である。

もし勤務時間が定められていて、それに準じなければいけないということであれば、管理監督者という意味からは外れることになる。


さらに、賃金面で充分に優遇されているということ。店長の給与が、残業代がつく一般社員と比べ逆転現象が起こるようでは、とても「優遇」とは言えないのだ。

ということで、判決は当然の帰結ではあるが、マクドナルドにしてみれば、「店長」が持つ権限をもっと弾力的に捉えていたというか、「店長」に経営者を期待していたのでないか?

おそらく“やり手”の店長であれば、予算の範囲内で自分が楽になる手立てを講じたであろうし、いわゆる重役出勤していても、売上目標さえ達成していれば、許されたのではないか?

「店長が管理監督者ではない」という判決は、大部分はそのとおりだが、結果として店長が無能であることを露呈したにすぎない。マクドナルド側の反省は、期待と現実が乖離していたことだろう。

ほとんどのコメントが原告に拍手喝采する中で、マクドナルド側を擁護したコメントは皆無である。擁護することは、火中の栗を拾うことなのだろうか?

マクドナルド訴訟は、損得だけに終始したさみしいものだ。仕事を“楽しむ”という観点がほとんど欠落し、人間のおおらかさを欠如したものに思えてしかたがない。

仕事が「労働」であってはつまらないと思うが・・・。



2008.01.27 (San)
成長の秘訣

相変わらず快進撃を続けている麦酒様清涼飲料水“ホッピー”製造のホッピービバレッジ(株)。快進撃の秘訣が、メールに乗って飛び込んできた。

木曜日配信のメルマガを読んで驚いた。(言葉は力なり『ミーナの一語一会』)を要約すると、ホッピービバレッジ(株)では、この春入社する新卒二期生の家庭訪問をスタートさせたとのこと。

去年、創業以来初の新卒社員を迎え、この春11名が入社予定。ホッピー社の看板娘・ミーナのありのままの姿を見てもらおうと採用課長とともに、内定者の両親を訪ねたのだ。

「子供が決めた選択ですから。私達は応援するだけです。これからは、ミーナさんが育ててやってください」と、巣立つ我が子への想いをありのままに両親から伝えられた。

その時、親の愛情を直に感じた看板娘は、こう決意する。「私を信じてこの会社に入ってくる彼らを絶対に育て上げよう。日本一の社員にしよう。彼らを守ろう。約束した夢は必ず実現させよう」

看板娘の思いの丈が、会社を強固にし、成長の起爆剤となる。それはホッピービバレッジの場合、家庭訪問から始まるものなのだ。

「雇用とは社員の人生を預かること」それを再確認させてくれたホッピーミーナのメルマガだった。


  ホッピービバレッジのホームページです。  http://www.hoppy-happy.com/  



2008.01.20 (San)
働く者に4タイプ

呼帆荘の新年会から1週間、温泉が恋しくなる寒さ。明日は大寒の入りだから、節分までは1年で一番寒い時期。陽の射さない日曜、雪が降リ出しそうな気配である。

童門冬二著・歴史に学ぶ智恵(中日新聞連載)を読んでいる。童門さんは、歴史を今に生かすことに精励され、とりわけ現代ビジネスとの関わりの中で歴史を語っている。

今日は、初代の佐賀藩主鍋島勝茂の言葉を引用し、働く者のタイプを分類している。労務管理を仕事にしている者にとっては、「働く者に四タイプあり」という見出しは、興味深い。

さて、どんなことを言っているのだろうか?鍋島公の言葉とはこうだ。

 
奉公人は四通りあるものなり。急だらり、だらり急、急々、だらりだらりなり

それぞれ解説すると、働く者のタイプは次のように分類される。

@「急々」 いいつけたことをすぐ理解し、仕事もテキパキと運んで完成させるタイプ。
A「だらり急」 指示したときはすぐ理解しないが、仕事をさせるとテキパキと見事にやり遂げる。
B「急だらり」 いいつけたときはすぐ応ずるが、仕事をさせると思うように進まず、時間がかかる。
C「だらりだらり」 理解もしなければ手も動かないというタイプ。

鍋島公は、「急だらり」が部下の中で一番多いとしているが、現代ビジネスにおいてもそうだろう。指示内容は解るが、実践が伴わない部下を持つ会社が一番多いのではないか?

そこで、この分類に属する者への管理が一番必要になる。ここがしっかりすれば底上げできる会社というのは多いのだろう。企業利益というのは実はこの底上げにかかっているといってもいい。

「だらりだらり」は論外。異動・解雇の対象にしかならない!


2008.01.13 (San)
新年懇親会・呼帆荘にて

昨日今日と、愛知県社会保険労務士会・三河西支部の新年懇親会。内海温泉(知多郡南知多町)の銘泉中の銘泉・「呼帆荘」で一泊、社労士仲間との懇親を深めた。

落日を少し過ぎて、呼帆荘に到着。すぐさま最上階の総檜造りの露天・天上の湯に浸かる。吹き荒れる寒風の中、冷えた体に丁度いい、少々塩の混じる湯が体を温める。

身近な風の音と遠い潮騒の音。ややぬるい湯が、郡上八幡の宗祇水を思わすような祠のような湯樋から流れる。それら音が、心地よい響きを奏で、疲れた体を慰める。

天上の湯を出てから宴会。総勢15名が座敷に並び、美酒に酔い、海の幸に舌鼓した。女性会員の参加はなく“花”に欠けた宴会だったが、なに姥ざかりの仲居さんがいればそれで十分だ。

宴会の後は、マージャン、カラオケ、アロマオイルマッサージ、就寝・・・様々。相棒を誘いカラオケスナックへ。時間が早いせいか、貸しきり状態、おかげで歌に会話に楽しむことができた。

それからが長い。部屋の仲間と深夜まで延々、芋焼酎のお湯割り片手に議論を戦わせた。仕事の悩みつらみから会の運営ということまで、素では言えない、聞けない本音が飛び交った。

朝は何事もなかったように起床、食事。そして、それぞれが気の趣くままに呼帆荘を後にした。それにしても天上の湯はすばらしい。聞けば、かつて全国人気露天風呂第1位を受賞とか。

「三度の飯より風呂が好き」という人がいるが、その気持ちが分かる。結局、寒風吹き荒れる天上の湯に三度浸かった。

   呼帆荘について知りたい方は   
http://www.kohanso.com/top.htm


2008.01.06 (San)
職業セミナー

中学1年の二男坊が、父親にインタビューをしたいと申し入れ。
何を突然!と思ったが、話を聞くと納得。

冬休みの課題として、身近な人の職場を見学したり、くわしい話を聞いて、「働く」ことの意味を深めるという狙いがあるとか。題して、「職業セミナー・働く人々のすがた」というのだそうだ。

インタビュー内容は、次の項目。

@仕事に就いた動機  A仕事の内容  B勤務時間  C仕事の長所や喜び
D仕事の苦労や悩み  E必要な資格・免許  Fその職に就く方法
Gどんな人が適していると思うか  H中学生でやっておくこと、アドバイス

そして、「何のために働く」のかを自分なりに理解していき、最後に、「今、あなたのやりたい職業(や将来の夢)は何ですか?を自問自答して終了。なかなか、いいじゃないか!

「現状を知る」というのが改善の基本だから、これはインタビューを受ける側も学びになる。「仕事の内容」「仕事の長所や喜び」「仕事の苦労や悩み」は、掘り下げればかなり深いものがある。

「社員が安心して働ける職場環境づくり」という、社労士としての使命をいったいどれほど果たしているか?を逆に問われているような気がする。辛いことだ。

昨今の労務管理は、その範囲は多岐にわたり、複雑で高度な知識・知恵が要求される。それらはすべて「社員が安心して働ける職場環境づくり」に要約されていく。

その目的を追求する過程で、喜びがあり、苦労や悩みが付きまとう。それを長所とするか短所とするかは、自らの心の持ちようでしかない。要は、できることを精一杯やることなのだ。

「どんな人が適しているか」。人の話を聞き、まとめる力のある人、そして課題解決の道筋を示すことができる人、と答えておいた。当たらずと言えども遠からず・・・か?



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あおみ労務事務所 社会保険労務士 柴田比呂志
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