■就職氷河期再来! 春の花が一斉に咲き出した。木蓮、辛夷、まんさく、れんぎょう、雪柳・・・・。 白木蓮などは、花を開いた途端に、春嵐で散り初めを迎えている。 色とりどりの花が目を楽しませてくれるが、今の景気を考えると、浮かれた気分は忽ち冷めてしまう。花を愛でるだけでは生活できないから、仕方のないことだろう。 来春の企業の採用計画が発表された。 企業側が急速な景気後退を受けて、新卒採用の門戸を狭めていることがよくわかる。 ここ数年続いた学生側優位の「売り手市場」が、ガラッと一変した。そりゃそうだ。仕事量が激減している状態では、人を採りたくても採用できない。「買い手市場」にならざるを得ない。 多くの企業は、今まさに入社しようとする新入社員の仕事を確保するだけでも大変なのに、来春の採用まで予想することは困難だ。よって、採用はどうしても消極的になる。 就職氷河期の再来!寒い時代がやってきた。 せめて春の花だけでも楽しもう! ちなみに、企業が採用の選考に当たり重視する点は(複数回答)・・・・ @コミュニケーション能力(86) A行動力(61) B熱意(35) B人柄(35) D責任感(34) E協調性(29) 熱い人が求められているのだ! 辛夷の花
■「雇用を守る」とは人間を大切にすること!
昨秋からの急激な景気の悪化は、あたかも高みからジェットコースターが滑り落ちるような勢いで、企業に容赦なく襲い掛かってきています。 受注はそろそろ上向くのか、さらに下がるのか、経営者はそれぞれの位置、立場で景気の動向を模索しながらも、眠られぬ夜を過ごしていることだと思います。
景気の悪化は雇用に直結します。経費削減のためのリストラは、派遣社員に始まり、契約社員やパート社員に及び、今後は正社員をも巻き込む様相を見せています。
幸い、「中小企業緊急雇用安定助成金(中安金)」が新たに創設され、正社員の首切りだけは避けたいという経営者の思いと重なって、多くの企業がこの助成金を活用しています。 私どもの事務所でも、中小企業の経営者から中安金の相談や手続き依頼がひっきりなしで、通常の社労士業務の他に中安金に関する業務をこなしていかなければならず、てんてこ舞いの忙しさです。 その意味では、製造業を中心とした百年に一度の世界的な景気失速の影で、我々社労士にとっては、百年に一度のビジネスチャンスなのかもしれませんが、お客様が元気になってくれてこその社労士ですから、早々の景気回復を祈るばかりです。 中安金については、新聞紙上でも話題になっているので、多くは申しませんが、「雇用を守る」ために、最大限活用していただきたい助成金制度です。 さて、今回は、「雇用を守る」ことに最大限取り組んでいる企業を紹介したいと思います。 C社の社長Tさんは、「元気な会社、社員といっしょにつくろまい」という経営理念の下、この不況は全員で乗り越えるのだと言って、「一人として切らない」決意をしています。 経営者の勉強会などでよくご一緒させていただきますが、物事の判断基準を、「人としてどうするか」に置いておられます。 「人間としてやって良いか悪いかを判断し、人としてやるべきことをやる」方針を貫かれています。先日お会いした際も、バブル崩壊時の思い出を通して、社員がいかに大切かを語ってくださいました。 Tさんは、バブル崩壊時に売上減少を何とかしようと親会社に相談したところ、いとも簡単に「人を減らせばいい」と言われ、追い打ちをかけるように銀行からも「これ以上融資できない」と宣告されたのです。そんな状況を社員に正直に話しました。 そして、社員に「私は家を担保に入れてでもお金を都合して、もう少し頑張る」と宣言します。そんな不安な状況下にあっても社員は一人として辞めずに、むしろ「社長、やろう!」「社長、頑張ってやろう!」とTさんを励まし続けました。 これを機に、Tさんは「一社に依存する体質を止めよう」と決意して、顧客の新規開拓に乗り出します。幸い、技術力も信用力もあり、新規の顧客がどんどん増えていきました。 苦しいときにリストラしなかったことで、自社の戦力は以前のままで保たれており、世の中の景気が少し上向いたときには、C社の業績はポンと跳ね上がりました。 「社長が逃げるな!」「社長が逃げてはいけない!」ということを社員から教えられ、逆に社員から育てられたようだったと、Tさんは当時を回想して語られました。 現状の景気が予想をはるかに超えて悪化している中、今までの手法が通用しにくい時代ですが、人間を大切にする経営を貫かれるTさんにエールを送りたいと思います。 先日、中日新聞のコラム欄・中日春秋に、「経営の神様」の異名を持つパナソニック創業者の松下幸之助さんの名前を見つけました。 そこには、「戦後最大の経済危機」と呼ばれる今、生きていたらどんな経営をしているのだろう、という問題提起がなされていました。 そして、「幸之助が残した言葉の中にヒントがあるのでは?」というコラム筆者の問いかけがあり、幸之助さんの言葉がいくつか引用されていました。
<策は無限にある> <好況よし、不況さらによし> <不況時こそ人材育成の好機> <衆知を集めた全員経営> <リストラをする場合は、まず経営者が辞める> <社員を大事にせえや、人間を大事にせえや、物とは違う>
雇用を守る」ことの本質は、人間を大切にすることだと思います。派遣切り、雇い止め、整理解雇などの言葉を聞くたびに、「人間が中心になっていく会社を作らなければいけない」というTさんの言葉がよみがえってきます。 (刈谷労働基準協会・会報誌原稿より)
ただ、常識的・基本的な従来の相談から、微に入り細をうがつ相談へと変貌を遂げている点を 見逃すわけにはいけないだろう。相談者が勉強しているのである。 年金の専門家である社労士がこれまで以上の研鑽を積まなければ、時代に取り残されていく のではなかろうか。