■雑感 労務管理の仕事に携わっていてつくづく思うのは、カネにきれいでありたいということだ。 すべてが損得抜きに生きることは難しいだろうが、少し損するくらいがいいような気がする。 権利と義務が背中合わせなのが世の中である。 しかし、義務を行使せずに権利だけを主張する人がいかに多いことか。 退職時、引継ぎもせずに有給休暇を残らず使って辞めていく社員がいるが、いい気分のものではない。 他方、退職する者に有給休暇を絶対に認めない経営者もいて、同友会で学ぶ「共に育つ労使関係」にはずいぶん遠いなと思う。 15年ほど前だった。ある会社の社員が仕事中の災害で1ヵ月ほど休業した。 社員は年少者だった。 療養の状況を確認するために社員の自宅へ電話したとき、お母さんが出られた。 ケガの具合、職場復帰のメドなどを聞いた後、労災保険の休業請求の話をした。 そのとき、お母さんは「そんなもの請求しないで下さい。働かんでおカネをもらうことを覚えますので」と言われた。 後にも先にも給付を拒まれたのは、このときだけである。