あおみ労務事務所
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労務記録
「会社の粘着力を増すためには社員との共通の思い出をより多く持て」と、明日香出版社の社長・石野誠一氏が、かつての講演会の中で言っていたことを思い出します。
このページでは、労務管理の意義を、「人を活かす」という視点でとらえ、業務で体験した出来事や身近で話題になったことなど、労務管理の記録を発信していきます。
2005.09.25 (San)
西三河掃除に学ぶ会

「掃除の会で、9月22日(木)からブラジルへ行ってきます」

先日、とある中小企業の社長からファックスを頂いた。
掃除の会は、正式に言えば、「西三河掃除に学ぶ会」と命名されている。
平成9年6月の初回開催以来、西三河の小、中学校のトイレの清掃活動を行っている。
中小企業の経営者を中心に、その家族や社員、生徒を含めた地域の方々を巻き込んでの活動は、今や、“心のあり方”を問う大切な会となっている。
家庭力の衰退、社会環境の悪化、青少年犯罪の低年齢化、学級崩壊など“心の荒み”が蔓延した社会の中で、トイレ清掃を通して諸悪を断ち切れないか、という思いから始まったと聞いた。

すでに、企業では、トイレ掃除で心が変わり、会社が変わったという例が数多くある。
“便器を磨くことで、経営者としての資質を磨く”
“便器を磨くことで心を磨く”
それらを実践した企業家が中心となって「西三河掃除の会」は立ち上げられた。
会には、遠く中国地方からくる猛者もあると聞く。
貴重な時間を割いて、高い交通費を払って、便器を磨きにくる。
そして、トイレ掃除を済ますと一様に「よかった」と言って帰っていく。
そこには、金に変えられない爽快感や達成感、満足感が横溢しているのだろう。

「何事も徹底を願えばそれなりに苦痛を伴う。しかしそれによって与えられる快感は他の何よりも大きい」(島崎藤村)

冒頭の社長は、ブラジルの便器を磨いてまた何か違う発見があっただろうか?
社長の会社では、毎朝社員が勤務時間前に自発的に掃除をしていると聞く。

社業発展の“礎”は、こんな心のあり方が作り出している!



2005.09.18 (San)
研修旅行

昨日、愛知県社労士会・三河西支部で研修旅行(愛知万博)が行われた。
総勢10数名の有志は、研修の目的もはっきりしないままバスに便乗した。
単に万博へ行きたいだけの者、暇を持て余して、“渡りに船”とばかり、船ならぬバスに飛び乗った者、ただ飲みたいだけの者、いや、“自然の叡智を仕事に生かすんだ”と、ことさら求道者を気取った者などそれぞれの思いが錯綜した研修旅行だった。

「森の鼓動と呼吸」〜かつてない自然発見の場〜

をテーマにした「瀬戸愛知県館」に心惹かれた。
「瀬戸愛知県館」は“海上の森”の一隅にある。
都市近郊の身近な自然がいっぱいのこの森は、生き物たちの姿を通じて、豊かな生命世界の大切さを教えているし、もう二度と会えない生き物たちからのメッセージを伝えている。

「ギャラリー空間 森の劇場」は、海上の森の四季の表情、そしてさまざまな生物の姿を2年間にわたって記録し続けた迫力ある特殊映像と世界初の7+1サラウンドシステムで体感するシアターで、館内に移植したコナラの木の物語も込めて、この森を残すことができた気持ちを伝えている。

愛・地球博もまもなく終わる。
半年間に渡る成果は計りしれないものがあるだろう。
経済効果もそうだし、自然の叡智に対する畏怖もあるはずだ。
そしてなにより、万博をつくり上げてきたスタッフたちの真摯な姿。
これが、限りなくすばらしい未来を想起させる。

会場内に、吾亦紅(われもこう)が咲いていた。
ひっそりと、慎ましい花が初秋の風に揺れていた。

愛知万博への旅行は、紛れもない“研修”だった。


森の劇場  虫の目線で生き物の姿を表現



2005.09.11 (San)
心のビタミン

アサノ薬品株式会社・浅野社長から「心のビタミン」というご自身の著書を頂いた。
「心のビタミン」には、浅野さんが長年胸に温めてきた詩、ことわざ、語録が収録されている。
毎月渡す社員の給料袋の中に、「給料メッセージ」としていろいろな言葉を書き続けるうち、浅野さんの心に残っていった光る言葉の数々。
その中には、労務に関する言葉、とりわけ人を育成する上で大切だと思える言葉も含まれる。
浅野さんの心を少しだけ拾ってみたい。

年齢を重ねても若々しさを保つには「かきくけこ」
1日にかならず感動する
何事にも興味を持つ 工夫する
健康に気をつける 恋心
このかきくけこが五官を通して脳が刺激され活性化する  
                                     (鎌田勝 総合教育研究所所長)

語ることを少なくし聴くことを多くせよ
怒ることを少なくし笑うことを多くせよ
言うことを少なくし行うことを多くせよ
取ることを少なくしあたえることを多くせよ
責めることを少なくしほめることを多くせよ           
                                     (二木謙三)

人間関係をよくする方法
明るい雰囲気を作る 相手に関心を持つ
相手の話を聞いてあげる 相手のよい点をほめる
考え方の違いを認める                       
                                      (田舞徳太郎 日創研社長)

してみせて 言ってきかせて させてみて
ほめてやらねば 人は動かじ                   
                                      (山本五十六 海軍軍人)

躾五原則
挨拶ができる お礼が言える お詫びが言える
ハイと返事ができる 履物がそろえら              
                                      (森信三 哲学者・教育者)

小さいことを積み重ねることが とんでもない記録につながる 
                                      (イチロー 野球選手)

苦しいから逃げるのではなく 逃げ出すから苦しくなるのだ  
                                      (中山靖雄 伊勢修養団)

生きることは 働くこと。仕事をさせていただくことです。
自分にふさわしい あるいは自分にできる仕事をさせていただいて
それが人様の役に立つ。それが生きがいというものです。
仕事があることはとても有り難いことです。         
                                      (瀬戸内寂聴 作家・僧侶)



2005.09.04 (San)
企業判断

マンガ企業判断入門〜銀行は企業をどう見ているか〜(監修 元東海銀行支店長 依馬安那)を読み返している。20年近く前の本で、所々くすんでいるが、内容は色褪せていない。

第2章「裸にされる経営者&社員」の中にある、“社員をチェックせよ”では、社員が生き生きと働き、能力を十分に発揮している会社は発展する。社員をチェックすれば会社のレベルを評価することもできる、とある。
チェックポイントとして次のような事項があげられている。

@ 来客の応対ぶりはどうか(態度・服装・言葉づかいはどうか、業務知識はあるか)

A 職場の雰囲気はどうか(活気があるか、暗くはないか、整然としているか)

B 社員の定着率(よい社員がよく退職していくようなことはないか)

C 研修・教育は行われているか、その効果はどうか

D 社員の能力が生かされ、評価されているか

E 給与、厚生施設のレベルはどうか



2005.08.27 (Sat)
三方よし

9月15日、16日と第33回青年経営者全国交流会(青全交)が滋賀で開催される。
テーマは、「先達の教え『三方よし』から未来を拓く〜商いの原点を見つめ現代経営の要諦を探る〜」。

『三方よし』とは、言わずと知れた近江商人の教えである。
“売り手よし、買い手よし、世間よし”というこの教えは、安土桃山時代末期から続く歴史の中で培われた商法を由来とする経営思想と言われている。

さて、我々社労士としての“三方よし”とは何だろうか?
顧問先にサービスを提供し、そこから報酬を頂くのであれば、まず二者が満足するのでなければ契約は成立しない。互いの信頼関係を築き、誠実に実務を遂行していくのがまず肝心である。しかしこれだけでは“二方よし”である。
もう一方は、何だろうか?

“売り手よし、買い手よし、世間よし”の“世間”にあたるものは、職場での働き手と働き手と生活をともにする家族、であると思う。
会社には社員がいる。そして社員1人1人に家族がいる。
それらすべてが、“よし”と思える職場環境。
社員が満足し、さらにその家族が満足できるような職場づくり。
社員が仕事を通じてやりがい、生きがい、誇りと喜びを感じ取れる企業づくり。

「社員が喜んでくれることを考えて実行するのが、社長の仕事。継続的に“給与”と“休与”を多くしていくのが、会社運営のポイント」

明日香出版社社長・石野誠一さんが、かつて、こう言っていたことを思い出す。

“世間”をよくする仕組みづくりが、我々に問われている!



2005.08.21 (San)
太平洋ひとりぼっち

“ホリエモン”が衆議院選出馬を決め、話題を集めている。
自民党・小泉純一郎が郵政法案反対派へ送った最後の刺客であるらしい。
国民新党を創設した前議員・亀井静香の狼狽ぶりが印象的だが、しかし亀井さんは強いぞ!
ホリエモンどう戦うのか?興味は尽きないが、過ぎてしまえば、“さわやかさ”のかけらも残らないのではないかと思う。
物事の良し悪しは、とどのつまり、こうしたさわやかさにあり、後にさわやかな風が吹いているのでなれればダメなような気がする。

さて、こちらは堀江さんは堀江さんでも、堀江謙一さん。
23才の時、1人乗りのヨットで太平洋横断に成功し、「太平洋ひとりぼっち」を著したかつての青年。43年前に、日本の無名の一青年が、太平洋を一人で渡り、サンフランシスコ湾に到着した。
冒険好きなアメリカ人は大騒ぎした。一方、日本での反応はパッとしなかった。
堀江さんは、高校を卒業した頃すでに、太平洋を渡る決心をしていた。
5年間ひたすら思い続け、周囲の大人たちの不安をよそに断固実行した。
堀江さんの心の中に、できるだろうという不安はなかったという。
“全て考え抜き準備した、必ず成功する”と信じていた。

青春とはそうしたものかもしれない。“できなかったら”とは決して考えない。
そこには、どこまでもさわやかな風が頬をかすめていく。



2005.08.14 (San)
労働は、喜び?

労働は、本来、喜びなのか、哀しみなのか?
色々な時間に、色々な場所で問ってみるが、答えは喜びでもあり、哀しみでもある。
悲しいかな、それは各々の受け止め方でしかない。     

作家・椎名誠さんが、郵便貯金振興会の月刊誌「貯金の話題」に登場している。
そこには、椎名さんの労働に対する受け止め方が記されている。

椎名さんは、1年のうち150〜200日間を旅で過ごしているが、旅した国々では、お父さんが家族のために一生懸命とってきた獲物を分け家族愛を実感できたり、パラグアイのインディアではワニを狩って部族みんなで分け与えたりといった生活。

「日本はあまりに贅沢で、モノを無駄にしすぎますね。
そして、感謝がない乱暴な国になってしまった」

ノドが渇けば、水道はもちろん、世界最多の自動販売機がそこら中に設置され、24時間営業のコンビニがある。日本はモノがあふれ、一見、豊かな国のようだが、生きている実感を得にくい国でもある。

「自分の夕飯のために川へ行って獲物をとる。労働は、本来喜びなんですね。
人生は毎日の喜びの積み重ねじゃないかなって思いますよ」



2005.08.08 (Man)
ほどほど人生論

「抜けだせストレスから」と書かれた、社会保険協会のパンフレットを見ている。
どこも、かしこもストレスが溢れていることがわかる。
ストレスの中で大きな比重を占めるのが対人関係であるらしい。
“発想の転換で、ラクラク人づきあい10ヶ条”なるものが載っている。

@自分のせいばかりにせず、自分をもっと認めよう
A「○○しなければならない」はやめよう
B意見の食い違いを恐れない
C理想・完璧を求めないようにする
D先入観を持たないようにする
E思いきって自分流を捨てよう
F失敗にクヨクヨしない
G人の話をよく聞くようにする
H「ノー」といえるようにする
I1人で頑張りすぎず、周囲の雰囲気をみるゆとりを

大昔、釈迦は「過去を追うな!未来を求めるな!」と言っている。
病気になった人が「病気にならない方がよかった」と考えるのは、過去を追っていることであり、「早く病気が治って欲しい」と願うのは、未来を求めていることなのだ、と。
病気である現在の自分をしっかり肯定して、「これは、これでいいことなんだ」と考えるようにと説いている。“引きこもり”も“リストラ”も同じ。早く治したいと願う気持ちがあせりになる。

病気は治るまで治らない!そう高をくくっていればいいと、釈迦は教えている。




2005.07.30 (Sat)
つまずきの石

日経新聞・プロムナードに歌人・早坂類さんの随筆「つまずきの石」が載っている。
早坂さんは、数年前、近所のホスピスの院内放送で流されていた牧師さんの話を聞いた。

「兄弟の前につまずきの石を置くなかれという聖書のことばの、このつまづきの石とは何だと思いますか?」

はて、と考え込んだ早坂さんの耳に続けてこんな言葉が飛び込んできた。

「これは掟や規則ということです。
愛が原則としてあれば、掟や規則で人を縛ることはありませんね」

早坂さんは、その時、規則や掟が必要である世界は、単に、愛のない世界だったんだと、とてもシンプルに新鮮な気持ちになったと述懐している。

さて、翻って労務の世界ではどうだろうか?
労働という言葉からして、愛のない世界だろう。
労働は、元々するのが嫌なことであって、働く側は当然のように労働者保護を要求するのだろう。働くことが三度の飯より好きな人にとっては、労働基準法の存在などどうでもよくて、就業規則も慶弔規程くらいしか関心がない。
愛のある職場環境ができればいいが、つまずきの石は年々増え続けているような気がする。
人がだんだん悪くなってきているのか、会社の締め付けがきついのか。

少し愛というものを考え直すのもいいだろう。



2005.07.23 (Sat)
ドナリ声

またまた日経新聞・夕刊「さらりーまん生態学」から。
今週は童門冬二さんが執筆。全文引用させて頂く。

以前、新入社員について“333の原則”というのがあった。
3日目・3か月目・3年目に訪れる“会社をやめたくなる時期”のことである。
A君は完全にこれにひっかかった。
入社3か月目に“出社拒否症”になり、いまは完全に“やめたい症候群”におそわれている。
理由は「まわりの課員がみんな悪意で自分を凝視している」という意識だ。
仕事中もパソコンやメールで、ぼくの悪口やウワサを交信していると思え、いたたまれない。
A君はついに無断欠勤した。朝早くに起きたA君は昼飯を食いに近くのラーメン屋に行った。
A君の注文を聞いた店員が調理場に向かってA君の脇から

「ギョウザ1個、ラーメン1個!」

と大声を張り上げた。A訓はビックリし、赤面し、同時に店員に怒りを感じた。
自分の注文品を店中に公開されて恥ずかしかったのだ。
ところが店内の客たちはそんなことは誰も気にしない。
テレビを見たり新聞を読んだり談笑したりしている。つまりA君が何を注文しようと関心ない。
A君は感動した。翌日もその店に行った。また脇で店員に

「ギョウザ1個、ラーメン1個!」

とドナラれた。これを1週間繰り返した。信じられない現象が起こった。
それは自宅で低俗番組だとバカにしていたTVが、店で見ると実にオモシロイのだ。

(なぜだろう)

A君はその原因を探った。わかった。原因は店員のドナリ声にあった。
各人の注文を店中に告げることによって、誰もが共通の立場に立たされる。
ミエも外聞もない開放次元が醸し出される。
A君は次第に元気になり出社した。



2005.07.16 (Sat)
休暇力

EDSジャパン社長のケリー・パーセルさんが、日経新聞・夕刊『Nipponビジネス戦記』の中で、「休暇力」を提案している。
ケリーさんによると、日本人のビジネス戦士は油断すると休暇中でもつい仕事のことを考えてしまうということらしい。さらに、日本人が休暇でもスケジュールを決め、効率的に観光地を回ることを、あたかも仕事をしているようだと警告する。

確かにそうだろう。仕事が“主”で、休暇が“従”である日本のビジネス戦士は、“従”である休暇を思い切り楽しむことを良しとしない。
休暇は“主”である仕事を存分に行うためのかりそめの時間であって、“御飯”に対する“おかず”でしかない。しかしそれでいいのだろうか?

ケリーさんは「休暇力」をつけるために、次のように説く。

@目的を持つこと。何となく休暇を終わらせないために、休暇を真正面からとらえていく。

A長期休暇だけでなく、日常生活に短い休憩を組み込むこと。例えば、週1−2回はしっかり睡
  眠をとるための門限を決めたり、月1度はイベント休暇を取り、国内旅行を楽しむなど。

ケリーさんによると日本は休暇を過ごすには申し分のない国だそうだ。
交通インフラの素晴らしさやIT(情報技術)サービスなどは休暇力を養うには充分である。

しかし、悲しいかな、「ゴルフがめちゃ高い」と嘆いている。



2005.07.09 (Sat)
長持ちするための知恵

花を長く楽しむための知恵として「水あげ法」がある。
水の中で茎を切り落とす「水切り」には、サイホンの原理で邪魔となる空気を排除するほか、バクテリアによる腐敗などで痛みかけた茎先を切り戻すという意味がある。
また、斜めに切るとよいとされるのは、切り口の表面積をなるべく大きくするため。(物の本から)「水切り」が花を愛する生活を演出するように、人材育成にもこうした知恵が必要だろう。

火曜日、中小企業家の会で講演会が開催された。講師は、アイシン精機潟oスケットボール部・シーホースのヘッドコーチをされている鈴木貴美一さん。
いいチームを作ることと、いい会社をつくることが同一だと改めて思い知らされた。
鈴木さんの話には、「人」に対する一貫した優しさが感じられた。
地方の弱小チームを日本一に導いた影にはどんな知恵があったのか?

鈴木さんによると、人の管理方法は概ね3通りある。
1つは、管理監督者が「人」を完全にロボット化してしまうこと。
次は、逆に「人」にすべての自由を与えてしまうこと。
そして最後は、自分たちのルールを自分たちの手で作り、あとは自分たちで考えてやること。
手法はその時代、背景で変わるのだろうが、鈴木さんは最後の方法を採られている。
そして、“楽しみながら技術の向上ができる”ことを一番大切にされていた。

「人」に注意したいときに用いる手法が“サンドイッチ法”。
まず、相手のいいところを褒める。次に注意したいところを言う。そして、また褒める。
選手と同じ目線で物を見、考え、積極的に意見を言わせるようにする。
仕事をやらせ、成功させることが、人の育成のコツであることなど、多くの学びがあった。

『アイシンバスケットボール部チーム心得』(鈴木貴美一)の中にこんな言葉があった。

  思いやりの心が乏しいと気づかぬうちに人を傷つける。

  仲間の不足を思うのはその人間の一面しか見ていないからである。

  人が不幸になればいいなどと考えるな。それは最後に自分に返ってくる。
  幸せは精一杯努力して自分自身でつかむこと。

鈴木さんは、「人」に対してどこまでも優しい。



2005.07.02 (Sat)
あなたのゴールは?

日経新聞・夕刊の「さらりーまん生態学」が面白い。
今週は、作家・幸田真音さんが筆を取っている。

幸田さんは、運動不足解消のため、最近、近所のゴルフ練習場でレッスンを受けるようになった。アメリカ人のコーチに、初対面でこう質問された。

「あなたのゴールは何ですか?」

相手がどんなゴルファーを目指すかで、おのずと教え方が違ってくる。
1年に2、3度ラウンドする程度か、それともハンディーキャップがシングルになるほどの上級ゴルファーを目指すのか。
アメリカ社会、とりわけ企業内では、こうした質問は日常茶飯事であるらしい。
部下がどんな自己目標を設定しているかを知ることは、上司としての常識であるということだ。
アメリカの人々は、業務上の目標はともかく、人生のゴールに関しては、かなりはっきりとした目的意識を持っている。

「太陽をめざして放つ矢は、木の梢を狙った矢より高く飛ぶ」

明確な目標を持つとパワフルになるのだろうか?
それゆえ、ときには、自問することも必要だろう。

「あなたのゴールは何ですか?」



2005.06.25 (Sat)
ゆとりとは?

昨日、中小企業家の会で、岐阜県安八郡にある「未来工業」を訪れた。
創業者である山田昭男相談役が、とくとくと未来工業の経営を語られた。
未来工業の経営は、“一途に横並びをしない”ということに尽きる。
言葉を変えれば、差別化ということだが、良くも悪くも他所と違うことをしている。

労務面では、年間休日140日、残業一切なし、タイムカードなし、制服なし、というのが有名だ。
「人、物、金すべてを中小企業が追えるわけがない」、せめて1つだけでもと、見事に人を基本に経営されているのが感じられた。

1日7時間15分の所定時間内に、効率的、集中的に仕事をするため、“常に考える”を社是としている。勤労者にとっての自由時間は、通勤を含めた会社の拘束時間と睡眠時間を控除すれば4時間くらいなもの。その時間くらいせめて人間らしく、という考え方が基本になっている。
だから、時間短縮によるゆとりは、“精神的なボーナス”である、と。

給料を高く、休みを多くするのは、中小企業には難しい。
二兎を追うことができないなら、一兎を追うところから始めよう。
やれるところからやればいいじゃないか、という相談役の声が一際大きくこだました。



2005.06.19 (San)
空想の舌

経営には、人、物、金といった経営資源をいかに効率よく機能させるかが問われるが、その中で“人”の問題が一番厄介なのは、人間関係というデリケートな部分に負うところが大きいと思う。
人間関係について、何か解決の糸口がないかと思うが、そんなものはあるはずもなく、その時々の背景にあわせて知恵を出す以外にはないのだろう。

ピンボケな知恵だと思うが、次の詩は人間関係に疲れたときの何かの参考にならないだろうか?


昔、ある探検隊が南極で遭難し、飢えのため1人の男を除いて全員発狂してしまった。
その男はというと、空想の世界で毎日ご馳走を腹いっぱい食べていたのだ。

ナットウ、トウフ、スシ、スルメ、ウナギ、テンプラ、ソバ、オデン

空想の舌は長いという。
男は海を越えて祖国にまでその先端を伸ばしていたのかもしれない。

                     (中上哲男詩集 「アイオワ冬物語」 空想の舌より)



2005.06.12 (San)
特等席

中日新聞サンデー版・「おばさん辞典」(作家・小川由里)から。

「最近、おばあさんとモメることが多くてねえ」

彼女は嘆いた。おばあさんというのは義母のことである。
夫と相談していると「のけ者にした」と言い募る。
一日外出すると「私の世話をするのがいやなら、なぜ嫁に来た」と詰め寄る、などなど。
ひがむ。すぐ怒る。強い自己主張。老化現象だと理解しているが、理解と感情は別である。

「おばあさんと向かい合ってご飯を食べているとおいしくなくなる。
せめて顔を見ないで食べる方法はないかしら」

私は友人だから単純に彼女にヒイキする。

「じゃあ、向かい合って座らなければいいんじゃないの。特に、真横は特等席かもしれない」

「なるほど」と彼女はうなずいた。一ヵ月後。彼女は元気に現れた。

「あれからおばあさんの横隣に座り、向き合わないで話したり食べたりしている。
とてもラクになった。それに顔を見ない分、淡々と話せて前ほどモメなくなった」

正面から向き合わない平穏、というのもあるようです。




2005.06.05 (San)
懸賞論文

ハローワーク刈谷・正面玄関に置かれているチラシに目が留まった。
チラシには“懸賞論文 若者からのメッセージ募集”と大きく書かれていた。
そして続けてこう記されている。

「働く若者のみなさんが、職場や日常生活の中で、日ごろから感じていること、経験したこと、将来の夢、みんなに伝えたいこと etc.  あなたの思いを寄せてください!」

いいことだ。いろいろな声、思いを聞くことで、それぞれの立場を思いやれる。人は、自分の目線でしかものの判断ができないものだが、他の人の目線を知ることも、どこかで役に立つだろう。

しかし、このチラシを持ち帰る人は、おそらくハローワークで求職する人ではなくて、仕事で訪れる人の方が多いのではないかと思う。
職を探している人は“そこどこではない”のである。
食うための糧を求めて、来ているのである。

以前、西尾市内の老人保健施設を尋ねたことがある。
担当常務に施設の案内をしていただいたが、ここでは、入所者のために“家庭菜園”を用意して、いつでも土いじり、野菜の栽培ができるようにしてあった。しかし担当常務がこう言われた。

「これは失敗でした。自分の体が思うようにならない者が、野菜を育てようという気にならない。そこどこではないのですね」

この懸賞論文、誰が応募するのだろうか?少し心配になってきた。
応募資格は、“概ね30歳程度までの者”とあるから、不惑を超えていてはダメか?
いいというなら、応募したいという気がするが、どうなのだろう。



2005.05.29 (San)
F君の帰郷

今日、F君が帰郷した。郷里は鹿児島県串木野市。
集団就職で愛知県安城市のアルミ鋳造工場へ来てから21年、まさに鋳物一筋だった。
最初の就業先が平成6年に廃業し、岡崎市内の同業者を紹介された。
それから11年半、鋳物との格闘はついに終止符を打った。
ここ数年は郷里の親から、「帰ってこい」を連呼されていた。
左官職人の父親も齢を重ね、長男坊を頼りにするようになったのだろう。

F君とは、単に社労士と顧問先の社員の関係に留まるが、保険給付の相談に乗ったり、労災の障害認定で監督署に一緒に行ったり、他の社員より記憶に残っている。
F君は、何を生きがいに生きていたのだろうか、とふと思う。
F君にとって大切なものとは何だったのだろう。
いのち、金の他に何があったのだろうか?
束の間の楽しみや喜びはどこにも転がっている。小さな幸せは一杯あっただろう。
水に流されていく木の葉のように、流されていく喜びというのもあったのだろうか?

「流れのなかでジタバタしても仕方がないよ、時は抗えないから」

F君の声が聞こえてきそうだが、時はその声さえも静かに掻き消していく。
郷里で両親と仲良く暮らすのも親孝行だろう。
鋳造工場で培った技術がどれほどのものか知らないが、この先役立つこともあるだろう。

立派な左官職人になることを願っているよ、F君!



2005.05.22 (San)
生き甲斐、働き甲斐

労務管理を行う上で、社員の欲求がどこにあるかを見極めるのは大切なことである。
社員が何を欲しているか?端的に言うならば、金か休みか他のものか、ということになる。
昔のアンケートでは、いのち、金、家族、仕事の順であった。
言葉のニュアンスで結果は少しずつ違うのかもしれないが、今のアンケートでは、特に若者のあいだで、生き甲斐、働き甲斐が上位に来るようである。

生き甲斐、働き甲斐という言葉はどうやら当て字らしい。
人類が地球上に出現してから300万年といわれる。
森から出て、サバンナに2本足で立って生きるようになってから今日までの人類の大半は、天然自然のものを採取して生きる人生だった。
農業を考え出し、土地に定着するようになってから、まだ1万年しか経ていない。
それまでは、自然が恵んでくれる木の実、果物、草が主食であった。
魚や獣は釣り具や弓矢が開発されるまではなかなか捕らえられなかったと思われる。
木の実や果物は実る季節が決まっているので、人は南から北へ放浪した。
しかし、日本列島のように長い海岸線を持つ土地では、海岸の砂浜を掘れば確実に食べられる“貝類”があった。貝は他の動物のように逃げ回らないから確実に捕れる。
努力を惜しまなければ確実に食べることができ、生きることができる。
そこから「生き貝」という言葉が生まれたと考えられる。
働けば確実に報いられるから「働き貝」。
その後、農業が生まれ、貝に大きく依存する必要がなくなっても、「生き甲斐」「働き甲斐」と文字を変えて生き残ったのではなかろうか。

生き甲斐、働き甲斐が上位に来る社会はやはり豊かなのだろう。
ニート(若年無業者)も多いが、生き甲斐、働き甲斐を求める若者が多くいる限り、まだまだ捨てたものではない。

そんなことを思う初夏である。



2005.05.15 (San)
未来の主役へ

中日新聞・県内版に安城学園高校吹奏楽部顧問の吉見光三さんが登場している。
吉見さんは、安城学園高校の吹奏楽部を吹奏楽コンクール全国大会で最優秀の金賞受賞の常連にした立役者である。
コンクール嫌いの吉見さんをここまで駆り立てたのは、生徒たちの意欲があったからだ。
「自分たちの演奏がどう思われているか、コンクールという形で知りたい」
しかし、初年度は地区大会で、出場12団体中最下位の銅賞。翌年出て、また銅賞。
次の年ようやく銀賞。県大会に出られるわけじゃないのに、会場で唯一盛り上がっていた。
生徒もさらに熱が入り、吉見さんももっと音楽を楽しめるようにと指導にのめり込んで行った。
やがて、県、東海、全国大会へと進めるようになった。

数年前、私が所属する中小企業者の集まりの会で講演してもらった。
「人は失敗をしないといけない時もあるし、恥をかかないといけない時もある。ぶつかることで人は熱くなれる」と大真面目に熱く語っていた。
吉見さんの言葉の中に、労務管理に役立ちそうなフレーズがあった。
ここに引用させていただくが、じっくり味わいたい文句である。

「音楽というのは合わない音を合わせていく過程から醸成されるものだと思う。
人間も同じ。合わないのは普通なんだ、というところから出発すればいいのではないか。
生徒たちとの呼吸もそう」



2005.05.07 (Sat)
研修新事情

社員が障害者の買い物を実体験するという“ハンディキャップセミナー”を開催している東京池袋・東武百貨店。車椅子や視界をさえぎる特殊なサングラスを使い障害者になりきって指定された商品の買い物をしたり、レストランで食事をしたりする。
「接客する人に社会的な痛みを知ってもらう」ことを目的にした研修会である。

車椅子の目線で接客を学ぶこの研修は、“人を思いやる”ことを教えるだろう。
とかく人は、自分の環境でしか“もの”が見えない。
自分の目線が他の人の目線であると錯覚してしまう。
それが誤りであることを、この研修は気づかせてくれる。
車椅子で買い物したときにうれしかったこと、嫌だったこと、歩いて買い物していたときには感じなかった売り場の違和感など、実体験すれば、自分が売り場に立った時に役立つことだろう。

東武百貨店での研修は、昨年から、「売り場に来店客が盲導犬を連れてきたらどう対応する」「視覚障害者への商品説明の仕方は」といった具体的なテーマを社員に与え、どう接客するかを考えさせるロールプレイ研修へと進化している。

しかし、人を思いやる心を育てる“教育”は、企業の中でしか生きられないのだろうか?



2005.05.01 (San)
会社に勤めないで生きていく方法

経営者は時間が自由になる、と言えば多くの方々から反発が出るだろう。
「お客様あっての企業。時間を自由に取ることなどできない」
「打ち合わせも、納期もお客様に裁量権がある。お客様に合わせて動くしかない」
組織の歯車として動かなくてはいけない仕事なら、確かにそうだ。
しかし、経営者の仕事はそんなものだろうか?
「それではワーカーではないか?」
ある方が、経営者が歯車に組み込まれた仕事をやっている様子を皮肉って言ったが、私のように何でもかでも1人でやっている者にとっては、確かにワーカーという一面も備えている。
それはそれで仕方ないとも思うし、それではいけないとも思う。
生き方の違いだけでは済まされないような気がする。

「会社に勤めないで生きていく方法」(ライフ・エキスパート編 夢文庫)という本がある。
時間に自由のない勤め人から脱して、イキイキと自由に生きよう!を謳い文句に数々の天職(?)が載せられている。こんな仕事があるのかとドキドキする。

“遺跡発掘”なる仕事がある。
遺跡発掘といっても、土の中から貴重な出土品を慎重な手つきで取り出すというような、ドラマの1シーンとはかけ離れている。99%が土運び、つまり肉体労働、土木作業員の世界である。
マンションなどの建設予定地では、用地を掘り返していると、古い建造物の跡が出たりする。
歴史的に価値のあるものなら発掘し、貴重なものは保存しなければならない。
そのために、調査を行って徹底的に調べるのである。
こうした調査は、都道府県や市町村が担当していて、各役所に登録しておくと、仕事があるときに連絡をもらえる。日当は7,000円(東京都)が相場。期間は、2週間から数ヶ月。

歴史好きだからという理由で参加すると、かえって幻滅を感じることになるだろうと、本は結ばれているが、仕事と名がつけば何事も“苦”がついてまわるものである!




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あおみ労務事務所 社会保険労務士 柴田比呂志
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