あおみ労務事務所
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労務記録
「会社の粘着力を増すためには社員との共通の思い出をより多く持て」と、明日香出版社の社長・石野誠一氏が、かつての講演会の中で言っていたことを思い出します。
このページでは、労務管理の意義を、「人を生かす」という視点でとらえ、業務で体験した出来事や身近で話題になったことなど、労務管理の記録を発信していきます。
2006.08.13 (San)
家内労働者

「内職、10年で半減 20万人に」
と、今朝の新聞で報じられている。家庭で簡単な作業を請け負う内職さん(正式には「家内労働者」という)が、1995年の約55万人から2005年には約20万7千人まで減少。
これは次の理由による。

@海外移転が進み、内職を依頼する企業数が減っていること
Aパートや派遣など働き方が多様化し、女性が外に働き口を求めるようになったこと

以前、愛知労働局から「家内労働安全衛生指導員」を委嘱されたが、家内労働の課題は、枝葉はともかくとして次の2つに集約できると思った。

@工賃が著しく安いこと
A作業中の災害に対する補償がないこと

時間の制約がないので、内職さんにとって工賃が安いのは納得済みだが、最低工賃(家内労働法8条)を割り込んでいる場合が多いのではと推測する。
定時の就労が可能であれば、パートタイマーで数倍の収入が可能になる。
一旦パートに出れば、よほど人の煩わしさがないかぎり、内職には戻れないだろう。

それから、内職さんは労働基準法でいう労働者ではないので、労災補償がない。
補償が欲しければ、自腹を切って労災の特別加入に入るしかない。
それで、家内労働法では委託者に安全衛生配慮義務を課している。
安全・衛生に関する措置(17条)がそれである。

が、家内労働法は、蚊帳の外に置かれているのが現状ではないか?
そう考えると、内職さんが減少しているのはいいことなのでは・・・?


    
拝啓 読者の皆様  昨日、誤って4月15日以降の記録を消失してしまいました。
    もし手元にあるようでしたら、ご一報下さいませ。私のこころの記録として
    残しておきたいものです。どうぞよろしくお願いします。       



2006.04.15 (Sat)
ハローワークが変わった!

昨日、刈谷労働基準監督署へ書類提出に行ったとき、一枚のチラシが目に飛び込んだ。

  愛知県内の一部のハローワークでは、平日夕方と土曜日にも職業相談や職業紹介を
  行っています!

少し驚いた。親方日の丸の“行政”が、民間並みの意識に変わったのだろうか?
営利を追求する民間企業は、顧客の目線に立って行動する。満足が得られなければ顧客はその店から離れていくからである。ところが、役所は自分たちの目線で利用者に対応してきた。
それではもうモタナイことに気がついたのだろう。いいことだ。

平日の日中にハローワークを利用できない在職求職者はゴマンといるのだから、こんなサービスは大歓迎だ。利用客の喜ぶ姿を目の当たりにすることで役人も一皮向けるだろう。
社会保険事務所の年金相談も一昨年から時間外の対応に乗り出した。
こうした行政のサービスを継続することだ。そうすれば失った信用もいずれ戻るだろう。

ちなみに、時間外職業相談・職業紹介を行う時間帯と実施ハローワークは次のとおり。

  平日夕方    午後5時〜午後7時
  土曜日      午前10時〜午後5時

  名古屋求人情報SC      名古屋市中区栄3-18-1 ナディアパーク・ビジネス
                   センタービル18階 052-252-8619
  ハローワーク名古屋南    名古屋市熱田区旗屋2-22-21 052-681-1211
  ハローワーク名古屋東    名古屋市名東区平和が丘1-2 052-774-1115
  ハローワーク豊橋       豊橋市大国町111 豊橋地方合同庁舎 0532-52-7191
  ハローワーク岡崎       岡崎市羽根町字北乾地50-1 岡崎合同庁舎 0564-52-8609
  ハローワーク一宮       一宮市八幡4-8-7 一宮労働総合庁舎 0586-45-2048
  ハローワーク豊田       豊田市常磐町3-25-7 0565-31-1400
  ハローワーク春日井     春日井市大手町2-135 0568-81-5135



2006.04.09 (San)
座右の銘

「先生の座右の銘は?」

先日、K社の社長に誘われて、炉端で一杯やっているとき尋ねられた。
先生と言われるほどの者ではないが、相手も呼び名を忘れると、とっさに先生と呼ぶようで、川柳に「先生と呼ばれるほどの馬鹿でなし」とあるように、ごくごく薄っぺらいものなのである。

で、座右の銘である。それほど真面目に生きているわけではないから、端からそんなものなどないが、不意打ちを掛けられて易々と切られるわけにも行かないので(もとよりその社長は純粋に尋ねられたのである)、知っている言葉を二つばかりあげた。

  桃李言わざれども下おのずから蹊を成す

  年年歳歳花相似たり 歳歳年年人同じからず

いずれも花を咲かすあたり、私のこだわりに相違ないが、長く温め抜いていたからこそ、とっさにでも口をついて出てきたのだろう。

司馬遷の「史記」の中に、漢の武将・李広を賞して、「桃や李(すもも)は何も言わないが、その花の美しさに人が集まり、自然に木の下には蹊ができるというではないか。李広は弁舌は下手であったが、その誠実、豪胆、武勇に部下は魅力を感じ、人は敬い、学び、従っていた」とある。

これが、「桃李言わざれども下おのずから蹊を成す」の意味するところである。
少しでも近づいていきたいが、炉端の生ビールの泡とともに生まれた“座右の銘”である。
すぐに消えてなくならないよう、注意を払いたいものである!



2006.04.01 (Sat)
失踪社員の扱い2

N社から従業員Fが失踪したとの連絡があった。
以前からFと弟との諍いが絶えず、その朝、諍いの後、プィッと出て行ったきり、半月が経過した。N社には失踪の当日、本人から「体調が悪い」との連絡があり、その後は音信不通。
前週に引き続き失踪社員の取り扱いのポイントを整理する。

懲戒解雇する場合の留意点は?

労基法第20条の規定により、使用者が労働者を解雇する場合には、少なくとも30日前に予告をしなければならず、この予告を行わない場合には30日以上の平均賃金を支払わなければならない。このことは懲戒として解雇を行う場合も同様である。
ただし、労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合で、労基署長の認定を受けた場合は、解雇予告も解雇手当の支払いもなくていいが、今回のケースがそれに該当するかというと、認定の要件を満たすのは難しいと考えられる。
認定基準の解釈例規として、「原則として二週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合」があるが、失踪した者に対する出勤の督促は、先の公示送達の方法によらなければ意思表示として効力を生じないから、Fを解雇する場合は、原則どおり予告解雇を行うか、予告手当の支払いを行わなければならない。
Fの場合、公示送達の効力が発生し、さらに30日を経過した日に始めて解雇が成立する。

退職金を支払おうと思うが、家族に代理受領させることができるか?

労基法第24条の規定により直接払いの原則の適用を受けるので、あくまで本人に対して支払わなければならず、家族に対する支払いは、本人の使者となって受領行為のみを行う場合に限られる。従って、この場合にも、供託の方法によるほかなく、供託を行った旨の公示が必要になる。



2006.03.25 (Sat)
失踪社員の扱い

N社から従業員Fが失踪したとの連絡があった。
以前からFと弟との諍いが絶えず、その朝、諍いの後、プィッと出て行ったきり、半月が経過した。N社には失踪の当日、本人から「体調が悪い」との連絡があり、その後は音信不通。
「失踪した社員の懲戒解雇の扱いと退職金の支払い」について相談を受けた。
以下、ポイントを整理する。

Fの場合、懲戒解雇してもよいか?

N社の就業規則には、「懲戒解雇の事由に該当したとき」は解雇する、との解雇基準がある。
また、「原則として14日以上正当な理由なく無断欠勤した場合」は、懲戒解雇事由に該当する。
“無断”とは、「事前に、許しを受けない」ことを意味するので、F本人から何の断りもなく所在不明になったということであれば、「無断欠勤」と考えて差し支えなく、こうした失踪状態が14日以上続いたのであれば、就業規則の懲戒解雇の要件を満たし、懲戒解雇できる。

懲戒解雇にしてよいならば、解雇の通知(意思表示)はどのように行うべきか?

解雇の意思表示は、失踪中であろうと、家族をFの代理人として解雇の意思表示を行うことは認められない。あくまでFに対して行う必要がある。この場合の意思表示としては、民法の規定により“公示送達”の方法をとらなければならない。
“公示送達”は、Fの住所地を管轄する簡易裁判所に申立てをし、裁判所の掲示場に掲示するほかこの掲示について官報及び新聞に少なくとも1回掲載する(裁判所がこの掲載に代えて市役所、町村役場の掲示場に掲示することを命じた場合にはこれに掲示する)ことによって行う。
そして、そのようにして行った意思表示が、相手方に到達したものとみなされるのは、最後に官報もしくは新聞に掲載(または市役所、町村役場の掲示場への掲示)があった日から2週間を経過したときとされている。(次週へ続く)



2006.03.18 (Sat)
健康保険法改正案

「月刊 社会保険労務士」3月号が届いた。その中に、「“これでは死ねない”健保法改正批判の盲点」(月刊社会保険労務士編集委員長・遠藤貞昭)という小文があった。
一読すると、政府が提出した健康保険法の改正案の中にある、健康保険の現金給付の見直し部分〜埋葬料の大幅減額〜について、しごく立腹していることがわかる。

現在、埋葬料については、被保険者死亡の場合、生計維持関係にあり、かつ埋葬を行うものに対して、被保険者の標準報酬月額相当額(最低保障金額10万円)が支給される。
ところが、今回の改正では、次のように改められる。

 被保険者が死亡したときは、その者により生計を維持していた者であって埋葬を行うものに対
 し、埋葬料として、政令で定める金額を支給する。(傍線は改正部分)

政令で定める金額は現在の最低保障金額10万円の半分、5万円である。
「いまどき5万円で葬式が出せるか。これでは死ねない」と編集長は大層ご立腹だ。

その気持ち、よくわかる。今後、こうした声が国会へ届けば、修正案が出るだろう。
しかし、編集長のような問題定義がもっと我々・労働法の専門家に必要ではないか、と痛感させられた彼岸の午後であった。



2006.03.12 (San)
お願い状

先日、南蔵院(福岡県粕屋郡篠栗町)住職・林覚乗さんの話を聞く機会があった。
南蔵院は篠栗新四国霊場の総本寺で、ブロンズ製としては世界一の大きさの釈迦涅槃像があり、「ささぐりのねぼとけさん」と親しまれ、年間130万人を超える参拝者が訪れる。

林さんの話で、印象に残ったものを一つ紹介する。

K社には、ビルの各階に社員トイレがあったが、そのトイレがいつも落書きで汚されていた。
落書きのたびに、社長が何度も注意するが一向に直らなかった。
どんなに注意しても直らなかったとき社長は、うちはこの程度の社員が集まっている会社なんだ、と諦めかけたが、社内で諦めていない人がいた。トイレ掃除のおばちゃんである。

おばちゃんは正紙を4枚に切り、それらに「お願い状 ここは私の大切な職場です。この職場を落書きで汚さないで下さい」と書き、すべてのトイレに張って歩いた。
すると、その翌日から一切の落書きが消えてなくなった。

社長が何度注意しても直らなかった落書きが、おばちゃんの張り紙でなぜなくなったのか?
これは、おばちゃんの仕事に対する思いの強さである。今自分に与えられたトイレ掃除という大切な役割、その思いの強さが、落書きする社員を動かしたのである。

社長だからエライのではない。トイレ掃除のおばちゃんだからエラくないのではない。
与えられた役割に対する思いの強さ、深さが、その人のエラさを決定していく、ということをその社長は、そのとき気づいたのである。

今年も人事異動の季節がやってくる。“職責”を考えるいい機会である。


南蔵院 釈迦涅槃像



2006.03.04 (Sat)
縁結び功労金制度

少子高齢化が進む岐阜県飛騨市が、粋な少子化対策を導入する。
未婚の男女が出会い、結婚して同市に住んだ場合に、その男女を引き合わせた紹介者に5万円の功労金を支払う「縁結び功労金制度」である。
また、コンサートに未婚の男女を招き、同時に出会いの交流会を開く事業も展開する。

いいことだ。こうした少子化対策ならどんどんやればいい。
しかし、飛騨市のような少子化対策を導入しようとする地域は、出生率が存外高いのである。
出生率の低い都市部こそ、こうした対策が必要なのだが、あまり進められていない。
これは、何が原因なのだろうか?

人口変動を引き起こす要因には、出生率の差による自然増減と、人々が移住地を移動することによる社会移動があるが、人口が減少している地域の方が、むしろ人口が増加している都市部より出生率が高いという事実から考えられるのは、出生率の差よりも社会移動の方が、人口変動に及ぼす影響力が大きいということである。

都市部は、人口増加に胡坐をかいて少子化対策を怠っているのではないか?
女性の社会参画が進んだ時、子育ての支援の仕組みが整っていないと、女性にとっての子育ての機会費用が大きくなり、少子化に繋がる、と指摘されている。
都市部で先行的に進んでいる女性の社会参画を考えると、都市部こそ少子化対策が急務なのではないか。都市部の行政が、「縁結び功労金制度」を検討するのもいい。
ドライな若者が、“縁結び”というウエットな情感を抱くのも悪くない。

大都会のるつぼの中に、少子化が影を潜めていることを見逃してはいけない!



2006.02.25 (Sat)
育てる!

   リーダーには部下に「教える」責任はないが、「育てる」責任がある。
  過去の知識や経験の伝達よりも、自ら考える動機づけのほうがはるかに大切だ。(資生堂・
  福原義春)

「船井幸雄の実践経営道場」(PHP文庫)によると、人材育成に必要な3つのルールがあるようです。

@ 人は、自分より人間性の優れた人を使うのは非常に難しい。
A 実際の仕事を通じて教育・訓練をするのが最も効率が上がる。
B 生活の現場、仕事の現場、それも、なるべく根元的なものの現場から、直接体験をして答え
  を得るのが最も教育・訓練効果が高い。

船井さんは、こうしたことから常に幹部社員には次のように言っているそうです。

部下を持つ者の仕事の中で重要なことは、部下の人間性と力をなるべく短期間に効率的に向上させることである。そのためには、実際の勤務時間とは別に、自分の部下が毎日、朝5時から夜11時まで年中無休で勉強し、働かなければならないように仕事を命ずることである。
その仕事内容は、できるだけアタマがよくなり、意志が強くなり、プラス発想をしないと達成できないようなものほどよい。

“鬼のような”という言葉が影を潜めた現在、船井さんのように鬼になることも時には必要ではないでしょうか。しごきしごかれの関係でしか、身につかないものが多くあるはずです。
この関係こそが、技の伝承に繋がるのでしょう。



2006.02.18 (Sat)
天職発見

  女性ならではの感性を生かし、鍛冶屋の世界に新風を吹き込む!

日経新聞・天職発見欄に、ホリーズ アイアンワークス・中沢知枝(ナカザワトモエ)さんが紹介されている。職業は鍛冶屋。右も左も分らないこの世界に直感を信じて飛び込んだ。

今の仕事に就くまでに、いろいろな職業を転々とした。
直近の出版社ではデザイン書編集の仕事に、最初は充実感を感じたものの、しだいに本の内容こそ違え、毎回同じことの繰り返しからくるストレスが原因の自律神経失調症になった。
会社員としての道を断念したとき、友人から職業訓練校を紹介される。
そこで、金属造形に強く興味を引かれた。ガラスや木工、陶芸でなく、直感で金属を選択した。
講師として来ていた鍛鉄家の先生に付いて半年間学び、職業訓練校卒業後は、その先生ともう一箇所の工房で修業し、2002年に独立。

近所にある洋食屋のオーナーが鉄製品に興味を持ち、何の実績もない中沢さんに店のインテリア用品を依頼した。そこでの実績と口コミで話が広がり、仕事の依頼が来るようになった。
今は、燭台や一輪挿しなどの置物やアクセサリー類などの小物を多く作り、クラフトマーケットに出品したりしている。

こうした経験を通して、中沢さんは、悩み多い若い世代に次のようなメッセージを送っている。

「何か迷った時は、それをやってみた自分と、やらなかった自分を想像してみてください。
やらなかった自分が後悔しているようなら、どんなに大変なことでもまず始めてみることです。
目標に向かって進み始めると、いろいろな情報や人やモノが自分のもとに集まってきます。
それを逃さないことが大事です」



2006.02.11 (Sat)
人に教える

企業内監督者の基礎的な管理監督技能の向上を目指すものに、TWI監督者訓練がある。
日常業務に最も重要な部下の指導、作業改善、人間関係をそれぞれ、“仕事の教え方”“改善の仕方”“人の扱い方”のテーマ別に分けて、実践訓練を行っていく。
関与する会社には、ことあるごとにTWI訓練を勧めるのだが、仕事の忙しさにかまけてなかなか受講していただけないのが現状である。
愛知県職業能力開発協会(名古屋市西区浅間)の案内用パンフレットでは、1日2時間を5日間で訓練、10人の対象者がいれば講師派遣も可能、とある。
1社だけで無理なら近隣の会社と合同で受講するのも手である。

さて、“人に教えるコツ”が書かれた小文を目にした。
書き手は、慶応義塾大学保健管理センター教授・大野裕さん。

大野さんは、高校で成績が低迷していた頃、英語教師から一冊の本を手渡された。
それは英語の「主語」「述語」「目的語」「補語」の組み合わせパターン=五文型を解説した本だった。そして穏やかにその教師から言われた。

「大野、英語って簡単なんだ。この五つのパターンさえ分っていれば、後の言葉はそれを修飾しているだけなんだ。だから、修飾している言葉は考えず、まず骨格の部分だけを見るようにすればいい」

それはとても簡潔で分りやすい説明だった。
これならできるかも知れないと思わせる話し方だった。
その本は薄く、文字が大きく、いかにもすぐ読めそうな気がするものだった。

こんな体験から大野さんはこう結んでいる。

「困ったときには、まずはできることから一つずつ取り組んでいくことが大事なのだ。
一つできれば次の課題に取り組もうという気持ちになり、先に進むエネルギーとなる。
こうした態度は、人に教えるときだけでなく、自分に対するときにも大事だ。
自分が自分に無理強いしていないか、時々立ち止まって考えることも必要だ」



2006.02.04 (Sat)
こころのサプリメント

「こころのサプリメント」(日経夕刊)を毎週読んでいる。
人との付きあい方、接し方が小さなエピソードの中に溢れている。
ピースマインド臨床心理士・谷地森久美子さんが柔らかく語っている。

フリーライターのAさんは昨年末に独り暮らしの父を亡くし、財産の整理をすることになった。
実家は地方の旧家。大事なことは親族皆で話し合うのが習いだった。

自分の考えをどんどん推し進め、人の主張を論破していくのがAさん流のやり方。
一方、親族はちょっとした形見分けでも干渉するので、そのたびに「会議」に。
やがてAさんが何かを主張すること自体が、反感を買うようになった。
そのためAさんはまとめ役を降り、弟に託すことにした。

弟はペースこそゆっくりだが、着実に絡んだ糸を解きほぐしていった。
無理難題を突きつけられても、いったんは「そうですね」と受けとめる。
ひとしきり語らせた後に「ところで、こうしてはどうでしょうか?」と相反する2つの要求の折衷案を粘り強く見つけていったのである。

自己主張の強いやり方は、ある種の力技だ。
仮に結論が同じだとしても、親族たちにとって弟の手法の方がはるかに受け入れやすい。
「押してもだめなら、引いてみな」である。
反対意見をひとまず聞き入れたり、少しだけものの見方をずらしてみたりと、柔軟に対応できるようにしたい。



2006.01.28 (Sat)
未適事業所巡回説明協力

ここのところ少し落ち着いてきたが、それでも慌しい日々が続いている。
今週は、通常の業務の他に、行政協力として社会保険の未適用事業所の巡回説明をした。
ご案内のとおり、社会保険は法人企業であれば適用の義務を負う。個人企業であっても、5人以上の規模になると、農林水産、飲食、サービス業の一部を除いてこれまた強制適用となる。
こうした強制適用事業所でありながら、まだ社会保険を適用していない企業に対して、制度の説明のために巡回する仕事が、年に一度、我々に課せられている。
大抵の事業主は、社会保険料の高さに目を回すが、今までになかった負担を強いられるのだから、容易に適用に踏み切ることがないのが現状である。

昨日、地元にあるA動物病院を巡回した。
事業主である院長はまだ若く、なかなかの熱血漢だった。
平成10年に社会保険を一旦適用させていたが、昨年廃止している。
その理由を問うと、国のやることは信用できない、と言われた。
国は嘘ばっかり言っているじゃないか!まだ民間の方が信用できる、と。

ああ、こんな考え方をする人もいるのかと思った。
大概の事業主は、保険料の負担を嫌がるか、社員が加入したがらないという回答を返す。
それを、国のやることが信用できないから社会保険の適用をしない、と考える人は、きっと真面目な人なのだろう。清濁併せ呑むことができない、どこまでも純粋な人なのだろう。
なるほど社会保険庁の度重なる不祥事もあった。
年金積立金の使途に納得しない人も多いだろう。
しかし、大抵の人は、生身の人間には誰にも表と裏があり、汚れた部分があるのを知っている。
胸に手を当ててみれば、誰もがどこかに恥ずべきところがあるはずである。

A動物病院は、院長の魅力なのだろう、大いに繁盛している。
こんな人に巡りあえるのであれば、まんざら行政協力も捨てたものではない。
それはあたかも、大寒の空に春風が吹いたように感じられた。



2006.01.21 (Sat)
仕事のやる気を高めるには

「やる気アップ研修」などを手掛ける、JTBモチベーションズ(東京・港区)が、ある時、研修の参加者に“やる気のもと”をリストアップさせた。
各自があげたのは、「上司に褒められたとき」「昇格したとき」などで、1から2個が限界。
そこで、「もっと日常的なことでないか?」とさらに考えさせると、「通勤途中にイケメンにあったとき」「終業後のビール」「顧客の笑顔」などが次々と出てきた。

日常的にやる気を上げるスイッチは人それぞれだが、実は案外ささいなものだったりする。
“やる気のもと”が多いほどモチベーションは上げやすい。
経営者は、社員のそうした“やる気のもと”を日常のコミュニケーションを通して、充分把握しておくことが大切なのだろう。

さて、物の本によると「やる気を阻害する10の要因とその対策」なるものがあるらしい。
企業の一番大きな財産は、“社員のやる気”だから、これは反面教師として知っておくのがいいだろう。

 やる気を阻害する10の要因とその対策               (日経プラス1より)
知識・技術 仕事をこなせる能力が欠けている → 自分への投資を惜しまず、新しい知識や技術を身につける
人間関係 周囲とのコミュニケーションが希薄 → 声や表情を意識し、周囲によい印象を与える
評価・承認 周囲が自分の存在や価値を認めない → 小さな仕事も大切にし、任せてくれた人に結果を報告する
コントロール 仕事の進め方などを他者が主導している → かつての仕事の成功体験をリストアップする
自己表現 個性を発揮できない → どんな小さなことでもよいから、他者に負けない専門分野を持つ
価   値 なんのためのしごとか、その価値を見いだせない → 自分の仕事が人や社会にどう役に立っているか思い起こす
適   職 今の仕事が好きでない → 周りの人が喜んでくれる仕事をする
他者期待 幸福感を共有できる人がいない → 家族や友人に仕事のことを話してみる
情   動 仕事に対する刺激が感じられない → リスクのある仕事に挑戦する
成   長 向上している実感が持てない → 少し上の目標を立てる



2006.01.15 (San)
出産無料化

13日、猪口邦子少子化担当相が「出産無料化」制度の導入を検討していく考えを表明した。
2003、2004年に合計特殊出生率が戦後最低の1.29を記録したことを踏まえ、若年夫婦らの経済的負担を軽減、少子化の進展に歯止めをかけるのが狙い。
少子化対策が言われて久しいが、今までの対策はボヤ程度の火消しだったと言っていい。
しかし、もはや少子化は社会を揺るがす大問題で、江戸時代の振袖火事に匹敵する惨事だ。

「出産無料化」は、入院を含む出産関係費用を国が全額負担する内容。
現行の出産支援では、本人や配偶者らが加入している公的健康保険から「出産育児一時金」が支給される。金額は現在30万円(一部に加算制度もある)で、今年10月から35万円に増額する関連法案を通常国会に提出することになっている。
一方、出産費用は定期健診、分娩、入院などを合わせ平均約45万円かかる。

一昨年、今や自民党を追われた野田聖子議員(無所属)が、少子化対策として「児童手当の増額」と「子ども保険の創設」を打ち出した。以下は、その時の野田さんの言葉。


「児童手当が(第1子、第2子にはそれぞれ月額)5,000円とはふざけた金額。
もっと産もうというインセンティブ(動機づけ)にならない。『お父ちゃんの給料でも、もう1人産んでも大丈夫よね』と思ってもらうには月50,000円という現実的な数字にしないと。
自民党内では『ばらまきだ』と言われるが、今もいろいろばらまいてるじゃない。
子どもは将来、納税してくれるんですよ。効果的なお金の使い方を考えるべきだ」

「すべての企業が就業規則に育児休業制度を盛り込むことなどを柱にする“子ども・子育て応援プラン”が新年度から始まる。そのためには、子ども保険創設が必要。
子どもの有無を問わず定額の保険料を納め、奨学金やひとり親の子どもへの育児金などに充てる。子どもがない人も現役世代の責任を果たし、将来堂々と社会保障を受けることのできる土壌もできる」

これが対策と言うべきものなのでしょう。
「出産無料化」は、野田さんの対策に匹敵する価値あるものです。
早急にまとめあげ実現していただきたい!



2006.01.07 (Sat)
改正高年齢者雇用安定法

例年になく寒い冬の中、無事、年が明けた。
ついこの間21世紀の扉が開かれたように感じられるが、あれからもう5年が経過している。
光陰矢のごとし、か。月日は渓流の水のように止まることを知らない。

いよいよ、改正高年齢者雇用安定法の施行に向けてカウントダウンが始まった。
少しこの法律の内容及び用語の意味をおさらいしたい。

 
改正高年齢者雇用安定法
従業員が65歳まで働ける環境整備を企業に義務づけるために4月に施行される法律。
厚生年金の支給開始年齢の段階的引き上げに伴い、収入がなくなる“年金空白期間”を解消する狙いがあるといわれる。
企業は@定年の延長A継続雇用制度の導入B定年の廃止の3つから選択できる。
継続雇用の場合は、原則として希望者全員が対象だが、労使協定で基準を定めておけば、勤務評価が低いなど契約しなくてもよいケースがある。

 
定年等の段階的引き上げスケジュール
    期       間 定年年齢
平成18年4月〜平成19年3月 62歳以上
平成19年4月〜平成22年3月 63歳以上
平成22年4月〜平成25年3月 64歳以上
平成25年4月〜 65歳以上

 
高齢者雇用制度
定年延長 定年年齢の引き上げ
勤務延長制度 定年年齢はそのままで、その年齢に達した者を退職させることなく引き続き雇用する制度 
再雇用制度 定年年齢に達した者を一旦退職させた後、再び雇用する制度
継続雇用制度  勤務延長制度と再雇用制度を合わせたもの
雇用延長 定年延長及び継続雇用制度を含む概念

ちなみにトヨタ自動車では、定年退職者を原則、再雇用する。




   
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