五代目は「先祖代々のやり方を守ってきたのに、なぜだろう」と考えた。 思い当たったのは次のようなことだった。 @経営の直接経費以外の費用が非常にかさんでいること(家屋の増改築、冠婚葬祭や寄付、交 際費など) A店員のほとんどが、店の優良性、安定性にズップリつかっていること
五代目は改善策を考えた。“三法(さんぽう)”や“三つ割銀(みつわりぎん)”と呼ばれる方法である。財政を三本化してその収入源も分け、本会計、経費以外の出資対応会計、予備積立会計に分けた。
三つ割銀は、画期的で「毎期決算の純益の三分の一を、従業員に分配する」というものだった。 つまり五代目は「ハングリー精神を失っている従業員を、ただ叱咤激励しても駄目だ。経営参画意識をもたせ、寄与度に応じた信賞必罰を明らかにすることが大切だ」と考えたのである。
店は新しい活力を生んだという。 落語の話が妙な方へ流れたが、話し手と聞き手を経営者と従業員に置き換えてみればいい。 語り手と聞き手の間にあるバリアを失くすことで、噺の面白さは直に伝わるはずだし、噺家への愛着も湧いていく。 経営も同じことで、経営者が従業員と同じ視線に立つことで、経営参画意識が生まれ、会社への帰属意識が高まるのではないか?要は、経営者がどう知恵を出すかである!
商売する上で近視眼的になることだけは避けねばならぬと思う。 モノを売っていると思っているうちは、お客さんの真のニーズはつかめない!